榎本釜次郎渡蘭日記②

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つづき。

正月第1日(日本11月12日)
 竟日薄陰時々見太陽如昨日

 朝9時15分錨を抜きウエンテンす。
 午後5時に錨を投ず。深さ10ハーテム。
 本船の掛所はシュマタラ島の平地付近。
 ※Sumateraスマトラ島
 ノールドエイランドは船の前の方で、
 ロンド島(Rondo Island)の事か?
 凡そ15町程にある。
 シュマタラは凡そ日本の1里位の所にある。
  本日午前マレイエルスの船2艘来れり。
  マレーシア
  果物を売る船に小猿及び小禽がいた。
  日本でいうところの文鳥を売る者

同2日(日本11月13日) 竟日薄晴
 午前6時に抜錨してウエンデンを成す。
 午後は風が頗る強くなる。
 4時にシュマタラのオーストキユストと、
 ※East Coast=東海岸。
 ヤーハー島ウエストキユストとの間、
 ※Java Island=ジャワ島。
  West Coast=西海岸。

 の中なるアンイェルという所に錨投。
 瓜哇島(ジャワ島)。
  アンイェル(Anyer)=ジャワ島の最西端。
 深さ16ハーテム。
 ここは船掛という程良い場所ではないが、
 ここに人家があって買い物が出来る。
 他の蘭船も4~5隻は居た。
 掛場より瓜蛙島フヒールデ・ピュントの、
 フェール南西2分1南Brababds hoer djeを、
 N.t.oに見る。夜に入っても風は止まず、
 テヴェーアンクル(2錨)に為す。
 透夜スタンペン甚だし。

同3日 竟日荒模様
 同所に碇泊す。風烈雲行早く、
 ダムピヘリュフト船スタンペンを試す。
 本日午前瓜哇人禽畜を売りに来る。
 砂糖鳥文禽及び尾長猿等である。
 砂糖と鳥2羽を買って籠に入れ、
 1キュルデンであった。
 〇予は昨夜より腹痛を覚え、
  ボイクロープ(下痢)が日に3度に及び、
  体が頗る痛かった。
  食事も取らずに甲板にも出ず、
  ドーフルス散を用いた。
  ※ドーフル散はアヘン・トコン散の事で、
   痛み止め下痢止めに使用された蘭薬。
  甲必丹(カピタン)曰く、
  今夜の潮勢1ヴァクト(夜)にて、
  5里のスコルヘイド(速度)で東に流れる。

同4日(本邦11月15日) 竟日陰晴不定、
 過午雨少降、入夜月明
 午前他蘭船の甲必丹アーンボールドが来る。
 正午に錨を抜いてウエンデンを為す。
 薄暮は風潮の勢い強く北東に流れる。
 この辺りの潮は極めて不規則にして、
 朝夕で向きは異なる。
 即ち北東と南西である。
 〇本日病は全癒。〇夜に入り月明で風快。
  バタービヤより初めての良夜なり。
  夜10時40分に錨を投ず。
  潮の為に大きく損を成したり。
  碇泊はSt.Nicolaas.PuntZ.Oに見て、
  Noord Eilandi.N.t.Wに見る。
  深さ23尋。

同5日(日本11月16日) 竟日好天気
 早朝6時頃に抜錨。ウエンデンス。
 本日スタラート・シユンダの内に入る。
 ※Sunda Strait=スンダ海峡
 午後6時を過ぎた頃に錨を投じる。
 深さ16尋。
 掛場はシブコ島の中心をNwtwに見て、
 ※Sebuku Island=セブク島
 カラカツー島の中心をZwに見る。
 ※Krakatoa Island=クラカトア島
 スタラート中の景色は、
 中国四国間の海山に似ていた。
 山の形や色は本邦と違う事は無い。
 ただ望遠鏡を以って覗けば、
 椰子樹がある等異なっている。
 夜は月が出た。

同6日(日本11月17日) 竟日雨模様時に少雨
 早朝7時に錨を抜いてウエンデンする。
 本日は驟雨模様で風力は定まらず。
 薄暮に驟雨が来る。
 夜に入って良夜となり月明りで良風が吹き、
 甲板上も心地よく涼しい。
 ただし船は頗る動揺した。
 今日遂にスタラード中程より出て、
 プリンス島が近くに見えた。
 ※Panaitan Island=パナイタン島の旧名。
 これ故に本日は錨を投げずに走った。

同7日(11月18日) 昨夜12時より雨降
 今日午後12時半まで
 續夫よりヘルデルウェール(晴天)

 天気は前に記するが如く。午後快晴。
 風は静にして波安らか。船足ははかどらず。
 風は同じくウエスなるを以てウエンデンす。
 未だにスタラートを離れきるに至らず。
 本日は8艘の商船が我船と同じ沖に、
 出るのを見た。今夜海上は極めて穏やかで、
 天気も良く月明りにして甲板に風そよぎ、
 極めて心地よし。

同8日(11月19日) 午前雨午後晴
 ウエンデン昨日の如し。未だエイランドを、
 パールセイレン(通過)するに至らず。
 夜に入り天に雲は無し月明りで風涼し。

同9日(11月20日) 午前少時ボイ来る。
 午後晴 入夜雨降又晴

 竟日ウエンデンを為す。
 本日スタラートを通過し終わる。
 爪哇のラートステピュントを見る。
 ※Laatste punt=最後の地点。
 晩餐に甲必丹がより大航海となるので、
 よき航海を祈ると杯を挙げた。
 今夕6時ペーリング(罫引)に而して、
 べステッキを定める。

同10日(11月20日) 晴
 早起きして甲板に出る。既に地方を失す。
 是はまさに大航海の始まり成。
 東印度地方よりカープ(岬)を廻りて、
 欧羅巴(ヨーロッパ)に航するには、
 大凢羅針の方向をカープの方、
 西南西1線に乗ってカープの付近を、
 航するのを益とする。
 如何となれば潮順なればなり。
 また欧羅巴より東印度に至るには、
 喜望峯の沖を乗り南緯高度の海路を、
 航するのを是とする。
 これまた潮順なればなり。
 本船の甲必丹の今までの9度の航海も、
 全て然りである。
 彼方より来る時は即ちアムステルダム及び、
 ※Amsterdam Island=アムステルダム島
 シテトパウリュス島の南を航する事多し。
 ※Saint-Paul Island=サンポール島
 甲必丹が一度彼方から来る時に、
 このアムステルダム島を30分北に見て、
 乗る事もあったという。
 尤も彼方からくる時はこの2島の辺りより、
 次第にクールス(方向)を北東に取るべし。
 〇当節爪哇海所謂ウエストムーソンなる故、
  無據南の方に向けて航するといえども、
  南緯10度以上の所に至れば、
  南東パッサート風(貿易風)に乗じて、
  本来の海路に向ける積なり。
  一アムステルダム、エイランドは東経77度
   35分、南緯37度52分
の所にあり
  一シイントパウリュス島は東経77度32分
   南緯37度52分
の所にあり
   Volgens rapport Lijss d eiland thans
   bewoond報告書によればその島には、
   住民がいるという。
 入夜月、出風涼し、12時と過ぎて有雨。
 本日正午有日

つづく。
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