久坂玄瑞は今年の大河で注目されています。
とはいえ久坂を主人公とした小説はあまりない。
今回紹介する古川薫の「花冠の志士」は、
数少ない久坂を題材にした小説。
久坂は吉田松陰や高杉晋作を題材とした作品に、
必ず登場してはいますが、
イメージは優等生といった感じでしょうか?
はたまた攘夷思想の過激な行動で、
京都尊攘派の主魁として書かれることも多い。
しかしこの作品の久坂玄瑞は、
等身大の20代の若者として書かれています。
激動の時代、久坂がどう考えていたのか?
もちろん本人以外真相はわかりませんので、
作者の古川の想像となりますが、
気持ちや思考を重視して書かれています。
晋作関連の作品では淡々と、
しかも激烈に尊攘運動を展開する優等生として、
ロボットのように一途に行動する久坂ですが、
彼も人間であり悩みもするし迷いもする。
邪な考えも浮かぶし落ち込んだりもする。
八月十八日の政変以降、
一瞬といっていいほどの展開で、
長州藩は京都を追われます。
既にそこは大きな抗えない流れの中。
そこから禁門の変まで久坂は、
何度も長州と京を往復していますが、
一瞬にして長州は敗れ、
久坂は鷹司邸で自刃してしまいます。
小説では久坂は晋作を「高杉さん」と呼びます。
僕のイメージではこの二人はタメ口ですが、
考えてみたら久坂は晋作の一つ年下。
しかも晋作は上士の身分。
「君と僕」の精神の松下村塾であっても、
この上下間はぬぐい去れなかったかも?
確かに同じ村塾の伊藤や山縣が、
晋作にタメ口で話したら激怒しそうです。
真相はわかりませんが、
そのパターンもありえますよね。
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