「幕末開陽丸 徳川海軍最後の戦い」安倍龍太郎

箱館戦争幕府海軍を題材とした小説といえば、
榎本武揚土方歳三を主人公としたものが多い。

榎本は言わずと知れた幕府海軍副総裁にして、
箱館政権の総裁です。主人公にはもってこい。
土方は新選組副長で箱館政権の陸軍奉行並
新選組での活躍はもちろん戊辰戦争での戦歴、
降伏する6日前に壮絶な戦死をするなど、
エピソードに事欠きません。

そんな2大スター(?)ではなく、
この「幕末開陽丸 徳川海軍最後の戦い」は、
開陽丸」艦長であった澤太郎左衛門が主人公。
※小説では沢太郎左衛門

この小説の面白いところは、
海の上から戊辰戦争を語ったところでしょう。
鳥羽伏見の戦いの結果を待ち、
いきなり慶喜が現れ江戸へ向えと言われる様子。
江戸城引渡し上野戦争の結果を経て、
蝦夷地へ向かう様子。
そして意外と語られない蝦夷までの航海の様子。
細かなフィクションはさておき、
なかなか面白い作品です。

小説は開陽丸が沈没するまでしか描かれない。
主人公の沢のその後も後日譚に10行程度。
あくまで開陽丸や海の上にこだわった作品です。
欲を言えば開陽丸引き上げの前後譚や、
無理のあるラブロマンスを排除して、
宮古湾海戦箱館湾海戦を書いてほしかったな。

沢は箱館政権で開拓奉行になっていますので、
沢の航海は開陽丸と共に終わったのでしょう。

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