日テレ年末時代劇スペシャル「五稜郭」

再三日テレ 年末時代劇スペシャルを、
他の幕末ドラマ等と比較していますが、
これは僕がリアルタイムで観ていたもので、
幕末史に興味を持つきっかけだったから。

そういう背景もありますので、
僕の中で美化されたフシもあろうかと、
もう一度鑑賞し直して見て、
振り返ってみたいと思います。
実際には全9作ある中で、
前半の6作品しか観ていませんが、
※これは当時僕が色気付いてきて、
 時代劇に興味が無くなったため。

7作以降は幕末ではありませんので、
観る必要もないかなと・・。
※第1作目も幕末ではありません。

まず今回は第四弾である「五稜郭」。
これは6作品の中で一番好きな作品です。

主人公は榎本武揚
開陽丸と共に蘭国留学から帰って来ますが、
幕府は長州征伐に失敗して風前の灯状態。
勝海舟は既に幕府に見切りを付けており、
その幕引きを模索していますが、
榎本は幕府主導での道を目指します。
時代は鳥羽伏見の戦い
江戸城無血開城上野戦争と流れ、
榎本は旧幕府艦隊と蝦夷を新天地と定め、
蝦夷に蝦夷共和国を建国します。
しかし明治新政府はそれを許さず、
ついには箱館戦争が勃発。
激戦の末に五稜郭を包囲され、
榎本ら蝦夷共和国は降伏しました。

榎本武揚は第一弾より主演の里見幸太郎
大石内蔵助西郷頼母西郷隆盛と演じ、
年末時代劇スペシャルの顔となっています。
里見浩太朗は時代劇俳優だけに、
着物のイメージが強いのですが、
軍服もなかなか見事に似合う。
僕はこの榎本武揚が一番好きです。

ナレーションは鈴木瑞穂
こちらも年末時代劇SPの顔のひとつ。
声ももちろん素晴らしいのですが、
ナレーションの挿入の仕方が非常に良く、
解説を的確に入れて涙腺を刺激します。

例に挙げると伊庭八郎の自害のシーン。
※史実とは違います。
仏仕官カズヌーブが伊庭に錦絵を見せ、
その錦絵の題材となった伊庭の奮戦を語り、
伊庭を介錯して途方に暮れる場面に、
カズヌーブのその後を挿入しています。
こういう感じで使われているのも、
年末時代劇SPの魅力のひとつですね。

脇を固める俳優陣は豪華ですが、
そのキャステイングは見事。
主演の里美を始めとして、
多くの俳優が連続して出演しており、
それぞれの作品で役をこなしています。
また役者が同じ配役というパターンも多く、
夏八木勲近藤勇石田信之徳川慶喜は、
一昨年の「白虎隊」と同じ配役で、
視聴者にもシリーズを連想させて、
その時系列を想像しやすくしています。

主題歌は堀内孝雄が担当していましたが、
五稜郭ではさだまさしが担当。
堀内孝雄の主題歌も年末時代劇SPの顔で、
忠臣蔵」の「憧れ遊び」の出だし、
♪君を花に例えたら~の「君」は、
実際は女性に対しての歌詞なのですが、
大石内蔵助の事のように錯覚します。
白虎隊の「愛しき日々」は大ヒット作品。
♪もう少し時か~が挿入されたシーンは、
涙腺緩んで仕方ありませんでした。
田原坂の「遥かな轍」もぴったりの曲で、
♪こうとしか生きようのない人生がある~
という歌詞には胸が熱くなったものです。

こういう名曲を連発した堀内孝雄を、
あえて変えた事に不安はありましたが、
さすが現代の吟遊詩人さだまさし。
最高の曲を作ってくれました。
夢の吹く頃」はまさに五稜郭の為の歌で、
♪時を越えて生き続けて
 今枯れかけた大きな木~
はまさに幕府そのもの。
♪けれどもその枝先に
 今年も若葉が生まれてる~
と榎本ら幕臣や諸藩士達を連想させ、
♪夢は吹き 夢は散り 
 夢が舞い 夢が逝く~
と時代に翻弄される様子が目に浮かび、
♪いつか夢がきっと夢が
 そこに吹いてくるから~
と逆境に立ち向かい、
一筋の希望に向かうように続きます。
僕はこの曲が大好きで、
カラオケに行ったら必ず歌いますね。

物語の最重要人物としては土方歳三
土方歳三役は渡哲也
これほど悲哀感の土方はいるでしょうか?
渡哲也の土方は斬新。
伊庭八郎に館ひろしを持ってきたのも良い。
一筋の希望にすがる榎本に対し、
土方は自らの死地を求める。
この対照的な2面性が、
実に見事に絡み合っており、
物語に重厚感を与えてくれました。

土方メインで描けば榎本は、
命が惜しくなって降伏した者の代表として、
榎本メインで描けば土方は、
時代に取り残された者の代表として、
それぞれが描かれますが、
両者が信念を持って描かれていますので、
どちらにも共感することができます。
もちろん敵方の政府軍も魅力的であり、
悪の組織としては描かれていません。
薩摩長州の確執も描かれていました。

出てくる人物群がしっかり生きており、
それぞれが思考を持った人間と感じられる。
当たり前のようですが、
それを表現するのはなかなか難しものです。

製作費約10億円
本編4時間50分の大作だから、
これが出来るのかもしれません。
力の入れようも違うでしょう。

頭の中で美化されているかと思いきや、
今も全く色あせる事のない名作でした。
これがこれから出来るとは思えませんが、
そういう作品が出来る時代が来れば、
嬉しいなと思います。

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