「雪に舞う剣」古川薫

下関から松本への道中に読んだ本。
久々の古川薫作品で幕末短編集です。


雪に舞う剣」。

春雪の門
憎まれ役を買って出た藩勘定方の自刃を、
3人の娘が守るお話。
幕末より少し前のお話で、
女の強さと若者の愚かさが感じられました。

玉かんざし
島田虎之助を主人公とした珍しい作品。
幕末三剣士島田虎之助の最期を描き、
君子の剣、清廉潔白を説く島田の罪悪感が、
島田の命を縮める。
ちなみに勝海舟も島田虎之助の弟子。

夜叉と名君
夜叉はお由良。名君は島津斉彬。
歴史というものは時に、
その人物の善悪を決めてしまいます。
実際はどうだったのか?
それは当事者しか知りえません。
もしかしたら当事者さえもわからない。
善悪をつけることこそおかしいのかも・

冬の花
中山忠光と白石正一郎のお話。
中山と白石の性格が表現できていて、
とってもおもしろいなと感じました。

青梅
野村望東尼と高杉晋作。
歳の差がありすぎて恋愛になりえないが、
なんとも淡い、愛でも恋でもない、
世界一の表現がある日本語にも無い、
何とも言えない感情があるのでは?
「吉田松陰の恋」もそうですが、
古川薫ってそういうものの表現に、
優れている作家だなと思う。

春雨の笛
平野国臣と白石正一郎のお話。
上記冬の花と同様に招かざる客が来ます。
中山は一歩引いて見れるパターンでしたが、
今回は実弟も巻き込まれました。
自分自身も家財をなげうって、
後戻りできない状態となっています。

歳月の鏡
野々村勘九郎をめぐる記者と老人。
稲荷町出身の老人が隠す謎。
ちょっとしたミステリーですが、
このくらいの短編がちょうどいい。

司馬も短編集がありますが、
古川作品は題材がマニアックです。
長州を題材にしたものが多いので、
それだけに奥が深い。
もちろん小説ですので、
創作要素はたくさんありますが、
新しい視点を与えてくれる作家です。

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