新型コロナウイルスの流行が続いてますが、
幕末に流行したのはコロリ(コレラ)です。
コロリ、コロナと一字違いってのも、
なんだか共通点のようにも感じられますが、
感染経路も症状も致死率もまるで違います。
名の如くコロリと死んでしまう事から、
コロリと呼ばれた訳ですが、
※他にも鉄砲、見急などの名称も。
今流行する新型コロナはそこまでではない。
死者も高齢者や特定疾患者が主ですので、
江戸時代の平均寿命が短かった分、
仮に流行っていたとしても、
パニックにはなっていなかったでしょう。
心理学的には集団は個人よりも愚とされ、
集団の決定は個人より危険な選択をするという。
現在のマスク不足は上記の典型的事例。
①新型コロナの流行が報道。
②常識ある人はマスクを買い占めたりせず、
普段どおりのマスクとうがい手洗いをする。
③非常識な人、過剰反応をする人、
人儲けを企む人が、マスクを買い占める。
④店頭にマスクがなくなる。
⑤常識ある人も驚いてマスクを求めだす。
⑥マスク不足。
・・とこれが現在の状況。
「未だ人類は愚かである」と言わざる得ません。
この集団心理で起こった事件がありました。
それが鴨川コレラ事件。
沼野玄昌は安房国鴨川に近い天津小湊の医者。
漢方医の養子となっていましたが、
漢方を嫌って佐倉順天堂に入門します。
蘭医学を習得した後の元治元年に郷里で開業。
幕府の医学所で種痘法の技術も身に付け、
人々の為に尽くしたという。
そして明治10年のコレラ流行の際、
明治政府は防疫体制を始めて全国的に敷き、
沼野は千葉県の命令で鴨川の防疫にあたり、
患者の隔離や治療に尽くしました。
しかしコレラの猛威に冷静さを失った領民は、
沼野が生胆欲しさに井戸にコレラの毒を入れ、
患者を増やしているという噂を信じ、
暴徒と化して沼野を襲撃。
沼野は棒で殴られたり、
槍や鎌で斬られたりした後、
加茂川に飛び込み溺死してしまいました。
領民を救いに行った筈が、
その領民達に殺されてしまう痛ましい事件で、
まさに集団心理で起こされた悲劇といえます。
人は1世紀半が経過しても同じことを繰り返す。
車が走ろうが、飛行機が空を飛ぼうが、
スマホが普及しようが、
人類は何一つ進化していないようです。
■関連記事■
・千葉県佐倉市 佐倉順天堂記念館
沼野玄昌は佐倉順天堂で蘭医学を学びました。
・佐賀県神埼市 伊東玄朴旧宅
幕府奥医師伊東玄朴の旧宅。
・大阪府大阪市 適塾と除痘館
当時の蘭学最高峰のひとつ。