大阪府岸和田市　泉光寺/岸和田藩岡部家墓所

岸和田藩の藩主岡部家の菩提寺泉光寺は、
初代藩主岡部宣勝の隠居屋敷でしたが、
遺言によって亡骸がここに葬られた為、
寺院となって岡部家の菩提寺となった寺。
寺名は宣勝の法号から取られています。

「山門」。
岡部家は元々今川家に仕えていたようで、
宣勝の祖父である岡部正綱は、
人質だった徳川家康と親交しており、
岡部家は今川家が滅んだ後は、
武田家を経て家康に仕えています。
宣勝の父岡部長盛も同じく家康に仕え、
小牧長久手の戦いで先鋒を務め、
上田合戦にも参加。
井伊の赤鬼と並んで岡部の黒鬼と称され、
徳川家が関東に移封された際、
山崎1万2000石で大名となりました。

徳川幕府の成立後は丹波亀山藩3万2000石、
福知山藩5万石と順次加増されて、
大垣藩に移っています。

「本堂」。
本堂には岡部氏歴代の肖像画や、
家康の感状等の寺宝があるようです。

長盛は松平清宗の娘を正室としましたが、
早くに亡くなってしまった為に、
家康の幼女を継室に迎え、
長男の岡部宣勝他10人の子を授かっています。
宣勝は父と共に大坂の陣に出陣しており、
長盛の死去により家督を相続。
龍野藩、高槻藩と領地替えが行われた後に、
岸和田藩に加増転封となりました。

岸和田への入封の際、
前領主の圧政に苦しむ領民が、
強訴の為に紀州街道に集結しており、
この報を聞いて紀州街道を避けて入城。
これによって騒動は避けられましたが、
後に領民の代表より意見や窮状を聞き、
減税の処置を取って善政を敷いています。
※但し、領民の代表は法に従って斬首。

「手水鉢」。
宜勝がここに葬られた後、
長男で2代藩主岡部行隆がこれを設置し、
身を清めてから父の菩提を弔ったという。
以降、歴代藩主はこの鉢の水で身を清め、
墓所に参拝するようになったとされます。

「岡部家墓所」。
本堂南側にある岡部家の墓所。
寺域の半分もあろうかという敷地に、
コの字を描くように玉垣付墓石が並びます。
藩主家墓所としては中位の規模ですが、
譜代大名の領内墓所としては大規模なもの。

「泉光院殿初代宜勝公」。
初代藩主岡部宜勝の墓。
宜勝は前記したように善政を敷いており、
名君と称えられた藩主となっています。
領民の負担軽減の他に寺社の復興も行い、
現在の岸和田の基礎を築きました。

「最乗院殿二代行隆公」。
2代藩主岡部行隆の墓。
初代宣勝の長男として生まれ、
父の隠居に伴い家督を相続。
同時に弟岡部高成に5000石、
同じく弟岡部豊明に2000石を分与し、
石高は6万石から5萬3000石となりました。
先代に続く｢守成の名君｣であったという。
隠居翌年の貞享4年(1687)、死去。

「雲祥院殿　三代長泰公」。
3代藩主岡部長泰の墓。
2代行隆の嫡男として生まれ、
父の隠居に伴い家督を相続。
岸和田といえば[岸和田だんじり祭]ですが、
この祭りは彼の治世に始まったとされ、
だんじり関係者が参拝に訪れるという。

「峰徳院　四代長敬公」。
4代藩主岡部長敬の墓。
5代長泰の次男に生まれますが、
嫡男龍千代の早逝により世子となり、
父の隠居と伴い家督を相続しましたが、
僅か3年弱で病死しています。

「十輪院　五代長著公」。
5代藩主岡部長著の墓。
4代長敬の長男として生まれ、
父の急死に伴って家督を相続。
｢長著公享保之条目｣と呼ばれる倹約令や、
文武の奨励を行った藩主で、
寛延元年(1748)の朝鮮通信使の来阪では、
接待役を担当するなどしています。
宝暦6年(1756)に家督を譲って隠居しますが、
その1ヵ月弱で死去しました。

「圓覺院　六代長住公」。
6代藩主岡部長住の墓。
5代長著の次男として生まれ、
父の隠居に伴い家督を相続しました。
生来病弱だったようですが、
養生すると共に藩政も良く務めて、
16年の治世を過ごして隠居。
その後は37年も余生を過ごしたようで、
文化6年(1809)に70歳で死去しています。

「大慈院　七代長修公」。
7代藩主岡部長修の墓。
5代長著の四男でしたが、
兄の長住に継嗣がいなかった為、
養嗣子となって家督を相続しています。
村方を指導して農政を重視しますが、
兄と同じく病弱だったこともあり、
僅か4年で隠居してしまいました。
その後は19年の隠居生活を過ごし、
兄に先立って寛政7年(1795)に死去。
。

「泰心院　八代長備公」。
8代藩主岡部長備の墓。
7代長修の長男として生まれ、
父の隠居に伴い家督を相続しています。
治世では天明飢饉等の天災が続き、
領内で強訴が頻発しました。
享和3年(1803)、死去。

「葆光院　九代長慎公」。
9代藩主岡部長慎の墓。
8代長備の次男として生まれ、
兄岡部長周と父長備が相次いで死去し、
家督を相続する事となっています。
藩の財政が悪化の一途を辿っていた為、
倹約、増税、禄高制限等の改革を行い、
文武の奨励、不正の断罪も推進。
天保4年(1833)に隠居していますが、
実権は持ち続けて藩政を担いました。
安政5年、72歳で死去。

「源量院　十代長和公」。
10代藩主岡部長和の墓。
9代長慎の長男として生まれ、
父の隠居に伴い家督を相続していますが、
藩政は父が実権を握っていました。
大塩平八郎の乱では藩兵を大坂に派遣し、
大坂城の守備を担当しています。
嘉永3年、死去。

「要玄院殿　十一代長發公」。
11代藩主岡部長發の墓。
嘉永3年より家督を継いだ幕末の藩主で、
日露和親条約締結交渉の為、
露艦ディアナ号の大坂湾来航を知り、
領内湾岸に砲台を設置していますが、
安政2年に22歳で病死しています。

長發の長男岡部長職が幼少であった為、
次代は旗本家を継いた長發の兄長寛が継ぎ、
長職は長寛の養嫡子となりました。
12代藩主長寛の墓はここには無いようで、
藩祖長盛開基の千葉県海福寺にあります。
※海福寺のある下総国山崎はかつての領地。

「雄岳院殿　十三代長職公」。
13代藩主岡部長職の墓。
父長發が死去時に幼少であった為、
伯父の長寛が繋ぎの藩主となり、
長職(幼名弥次郎)を養嫡子としています。
しかし長寛の長男信美(幼名小三郎)を、
次期藩主と推す岡部結城と、
長職を推す降屋宗兵衛が対立し、
王政復古後に新政府が介入する事となり、
裁定によって長職が藩主となりました。
※信美は村上藩の養嫡子となって、
　村上藩主となっています。
廃藩後は東京に移住して慶應義塾に入学。
米国イェール大学へ留学しますが
中退してケンブリッジ大学に学び、
欧州にも渡りました。
その間、キリスト教徒に改宗し、
帰国後は外務省に出仕しています。
外務次官、東京府知事、貴族院議員、
司法大臣、枢密顧問官等を歴任しており、
晩年は宮内省に出仕して、
大正天皇の側近となりました。

※2025/12/09に再訪して写真追加。