古い本ですが「野山獄相聞抄」を読みました。
映画「獄に咲く花」の原作ということで、
読んでみたいと図書館で借りてみました。
文庫版は「吉田松陰の恋」に改題されています。
これは短編集で「野山獄相聞抄」の他に、
4篇が収録されていますが全部面白かった。
ネタがマニアック過ぎます(笑)。
「見事な御最期」
禁門の変の責任を取らされた三家老のお話。
切腹の目付役の視点から、
三者三様の切腹の様子を語ります。
こう書くと残酷話のようですが、
人間模様を重点に書かれていました。
長州藩の滅亡の危機を救ったのは、
この無念の三人の首だった事は、
忘れてはならないところです。
「野山獄相聞抄」
高須久子の目線で松陰が描かれています。
退屈な獄生活に現れた松陰という風。
獄の全てを変えるようなその風が去ったあと、
また前と同じ日常が訪れるのですが、
風を知ってしまったあとは、
前と同じというわけにはいきません。
ぽっかりと空いた虚無感が切ないお話です。
「お絹と男たち」
稲荷町遊郭の女主人お絹と、
長府藩士泉十郎そして伊藤博文のお話。
彼らの長府での事件もさることながら、
気丈に女の身で遊郭を切り盛りするお絹に、
好感が持てるお話でした。
「後裔たちの海程」
興膳昌蔵の暗殺とその仇討のお話。
身分制度の無常さに身がつまされます。
この興膳昌蔵。知らなかったのですが、
竹島を開墾しようと言った人物らしいですね。
「刀痕記」
井上聞多暗殺未遂事件の実行犯とその後のお話。
主人公は俗物です。
しかし我々が彼と同じ立場であれば、
どのように振舞ったであろうか?
そんな思いがよぎるお話でした。
古川薫の作品はこれで二度目です。
非常に読みやすい文章が印象に残りますが、
なにより着眼点が面白い。
長州関係を題材にすることが多いようですし、
これからも読んでいきたいと思います。
■関連記事■
・「志士の風雪-品川弥二郎の生涯」古川薫
品川弥ニ郎の生涯を描いた古川薫の小説。
・獄に咲く花
原作は野山獄相聞抄。
・萩市 芳和荘&野山・岩倉獄
松陰が幽閉された野山の跡。