「勤王芸者」小川煙村


中西君尾を描いた「勤王芸者」。
明治43年に小川煙村が著した小説で、
女性を描いた作品は当時は殆どありません。

今回ちょっと読んでみようと思うのですが、
昔の文章を読むのはちょっと骨が折れる。
とりあえずざっと読んで、
それから何度も読み返します。

京都の魚品という長州藩贔屓の貸座敷。
高杉晋作は怖いもの知らずでしたが、
情けに厚く遊び上手、
小りかという芸者を贔屓にしていて、
国を憂う一方で英気を養う為に、
大酒を飲んだり、
静かに酒を傾けたりなかなか
粋な人
井上聞多も誘われて花街に来ていました。

高杉は猪口を飲み干して井上に言います。
貴様も情婦をこしらえたらどうだ?
と酔いに乗じてしきりに井上に薦めます。
良い子を取り持ってもらう事にしようと、
手を鳴らして芸者を催促しました。
高杉さんは粋人やさかい、
 名指ししておくれやす。
 井上さんはどんな子がお気に召すやら?

そうだねぇ。井上はウブだから、
 宜しく取り持ってくれよ

しばらくして4~5人の芸者が現れ、

いずれも花のような美しさでした。
井上はあれならと思う女を見つけましたが、
その日は名指せず、

今夜は色事抜きに盛り上がろう!
と呑み明かしました。

井上の目に止まった芸者は
君尾という。
スラリとした姿、賢そうな目元、

優しさと謹ましさを兼ね備えた美女。
一方で井上は無骨な長州田舎侍。

江戸の侍などに比べれば山出しでした。
けれど君尾は風流な男より、

男らしい男を選ぶたちで、
二人はいい仲になっていました。
それを知った高杉は、
おぬしはとうとう君尾を手に入れたね。
 ウブだと思ったら、
 貴様は何事にかけても
 すばしっこい男だね」と大笑い。
ある日の事、高杉と井上が魚品に泊り、

翌朝に君尾は小りかと部屋に行くと、
部屋から高杉の声が聞こえます。
そんな恰好じゃ腹は斬れない!
   腹を斬るにはこうするのだ!
何事かで腹を斬ろうとしているらしいと、
君尾と小りかは顔を見合わせ心配しますが、
とにかく様子を見てみようと、

襖の隙間から中を覗きました。

中では高杉と井上が、

諸肌ぬいで切腹の体勢。
彼女らはドキッとしましたが、

高杉が持っているのは扇子・・・・。
左脇腹へ扇子を押し立て、右に一息!
まあ、貴方は何をなすってるのどす?
二人の芸者はやれやれと部屋に入ると、

高杉は快活にからからと笑って、
井上に切腹の仕方をおしえておるのじゃ!
 こういう稽古をしとかなならんから、
 暇があればやるのじゃが・・・
 おぬしらも自害の稽古を教わっておけ

切腹はうつむき加減になってやらないと、
仰向けに倒れて不覚をとってしまうらしい。
高杉は井上に懇々と論じていました。
これを聞いた小りかは君尾に、
なあ君尾さん。
 私らも咽喉の突き方教えて頂きましょう
と言った。
※文章は正確ではありません。

このエピソードはもちろん創作でしょうが、
なかなか面白い話です。
花街で朝から真面目な顔して切腹の稽古。
男って馬鹿ですね。

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