今更ながら、
明治維新という過ちをしっかり読んだ。
この本の批判は多いのですが、
意外に賞賛している人もいる。
政治がらみの評論家やブロガーからですが、
敵を倒すにはどんな手でも使う。
吐き気がしますね。
この本には、
~日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト~
というサブタイトルが付けられています。
テロ=悪の前提で書かれているこの本は、
作者の大先輩で尊敬する司馬遼太郎がいう、
「桜田門外の変だけは、
歴史を躍進させたという点で例外・・」
の言葉に噛みついている。
これを「呆れる」と言い、
「暴論と断じるべきだ」、
「暗殺に例外を設けることは論といえない」
という。そりゃそうでしょう。
現代においてならね。
でも全く話になりません。
これは思想の考え方で歴史ではありません。
昨今の一連の無差別テロでは、
歴史は変わりません。これは正解です。
しかしテロで歴史が動いたのは事実で、
それを否定するのはただのヒステリー。
司馬は桜田門外は例外としていますが、
テロで歴史が動いた事件は数多いのです。
中大兄皇子、中臣鎌足の乙巳の変。
これはまぎれもなくテロ事件です。
大化の改新はテロで成し得た歴史でした。
天皇拉致を防いだ池田屋事変の章では、
池田屋に新撰組が切り込んだ話が書かれ、
筆者は長州側をテロリストサイドと呼ぶ。
しかし新撰組もテロであるという事を、
筆者は全く理解していない。
体制側の暴力もテロリズムなのです。
「それは違う」というのであれば、
たしかにそれは違う。
新撰組の襲撃というテロ。
志士達が起こそうとしたとされるテロ。
桜田門外で水戸浪士が起こしたテロ。
中大兄皇子らのテロ。
京都の浪士達のテロ。
ヒトラーの暗殺未遂事件のテロ。
・・・・そして、現在の無差別テロ。
すべてテロですが、すべて違うのです。
一緒くたにして否定するのも良いでしょう。
思想的にはね。
しかしながら歴史の評価としては?
仮に現在。
某国をめぐる緊迫した状況で考えれば、
自国民がテロが発生させて、
独自に解決する方法もあるのではないか?
少し暴論ですがベストではなくとも、
ベターではあるかもしれません。
その後の流れによれば、
そのテロは評価できることもあるでしょう。
あくまで仮の話です。
この本は吉田松陰という人物を、
地方都市の悪ガキだという。
晋作の顕彰碑の
「動けば雷電の如く・・・」を、
バカバカしい一文という。
それは人の感性なので好きに言えばいい。
たぶん長州人が嫌いなんだろう。
彼に言わせれば、
全て長州&水戸が悪いという結論になる。
暴力を否定しているかと思えば、
奥羽越列藩同盟軍の勇敢さを称えている。
彼に言わせればその後の大戦も、
原発事故も長州のせい。
相当嫌われたものですね。
個人的に山口・茨城県民あたりに、
何か嫌な事でもされたのでしょうか?
水戸に関する章も事実誤認が多く、
挙げてるとキリがない・・。
ここまで来ると便所の落書きです。
筆者は資料を検証したりしないらしいので、
それもその筈でしょう。
僕も個人的に嫌いな歴史上の人物はいます。
でも、ただそれだけ。
何が良くて何が悪いなんて言えない。
歴史ファンとして歴史を歪めないでほしい。
それを広めて政治利用しないでほしい。
ただそれだけ。
この本を読んで、
「今の政治に対する長年の疑問が解けた」
とのたまう輩がネット上に結構いる。
最近YouTubeでそう言ってる女性を見た。
大して本を読んでいない人が、
頑張って読んだ本がこれだったのだろう。
この本しか読んでいないので、
書かれている事だけが真実となる。
バカ丸出しなのですが、
それが他に派生してしまう。
危うい・・・・。
この本を「面白い」という人がいました。
IFとして物語を楽しんでらっしゃる。
沢山の本を読んで、真実、フィクション、
そして嘘を見分けられる人。
そして見分けた嘘やフィクションを、
楽しむ事ができる人。
「なるほど。面白い推理だね」とか
「その可能性は0%ではないね」など、
一歩引いて読むことができる余裕がある人。
そういう読み方もあると、
非常に感心させられました。
僕もそうありたいものですが、
やっぱり「確信犯の嘘」は大嫌いです。
■関連記事■
・「明治維新の「嘘」を見破るブックガイド」
これも遠回しな政治批判だった・・。
・「消された「西郷写真」の謎」
最初は良いのですが。
・「幕末 維新の暗号」
トンデモ本。
やっぱり一番底にある歴史はしっかり勉強しておかないと、こういう本だけ読んで知った気になると危険ですね。
どんな本でも、読んだからって真に受けないようにする事を心がけています。
長州藩が忍者体制だったと主張している人達もいます。
鹿島昇や太田龍という陰謀論者らが唱えているのですが、
長州は忍者の国(!)で、その忍術で明治維新の主導権を握ったというもの。
桂小五郎が中忍で、伊藤博文が下忍なんだそうです(笑)。
彼らが考明天皇を殺害して、明治天皇をすり替えたんだとか(笑)。
ほとんど「るろ剣」や「銀魂」のようなマンガの敵組織です。
ある程度当時の歴史を知ってる人からすると、バカバカしい話なんですが、
こういうのを本気で信じている人とか意外と沢山いるんですね。
また、ウソとわかってて、天皇制反対のソースとして利用している人もいます。
↑これが一番性質が悪い・・。
歴史に対する繭未さんのスタンス。とても良いなと感じています。
定説も異説もifもどんどん吸収して楽しんでおられる。
ブログ毎度楽しみに読んでますよ。