西郷隆盛の写真は、はたしてあるのか?という題材で書かれた本。
「消された「西郷写真」の謎」というタイトルから、
陰謀系のトンデモ本かと思ったらそうでもなかった。
著者の斎藤充功は、ノンフィクション作家で、
近現代史、犯罪者、刑務所事情といったテーマを中心に、
取材・執筆を行っている人だそうです。
「これが西郷隆盛の写真だ」と世に出回っている写真を、
法人類学の権威東京歯科大学橋本正次教授の鑑定を軸に検証していきます。
「フルベッキ写真」、「永山西郷写真」、「青柳家西郷写真」、
「スイカ西郷写真」、「一三人撮り」、「大阪造幣局前写真」。
これらを検証して成否を確かめますが、
西郷ではないと断定できたのは、「永山西郷写真」、「青柳家西郷写真」、
「一三人撮り」の西郷写真。
別件で「フルベッキ写真」、「大阪造幣局前写真」の西郷とされる人物が、
同人物の可能性があることも判明。
もちろん西郷とは断定せず西郷とは限らないが、
2つの写真の人物が同じ可能性があるとしています。
面白いのが、トンデモ説を垂れ流す加冶将一の著書を、
理論的・科学的に否定しながら(結構こきおろしてる)、
一級の歴史ミステリー小説とフォローもしています。
優しい人なんでしょうね。
僕からすればミステリー小説としても三流としか思えませんが・・・。
残念なのは、話が脱線して明治天皇のすり替え説にまで発展してしまった事。
明治2年にオーストリア人に盗撮された明治天皇の写真と、
明治5年に内田九一が撮影した明治天皇を比較し、
別人ではないかと仮定しています。
途中まで理論的・化学的に検証されていたのですが、
法人類学的な観点ではどちらともいえないとの結果が出ながら、
巷のすり替え説を著者なりにアレンジして仮定を立てます。
例の「フルベッキ写真」の大室天皇説は、法人類学的に否定してますが、
2つの写真の撮られた明治2年から明治5年の間に、
すり替えたのではないかと仮定。
ツッこみたいのは、盗撮写真が本物の天皇がどうか微妙なとこと、
「大阪造幣局前写真」の西郷とされる人物が、
海軍の軍服を着ているというところ。
その辺の追求がもうちょっと足りなかったかな?
一連の陰謀説は否定してますが、
どうも「すり替え説」に関しては、偉い人達も盲目になるようです。
色々検証とか推理とかされてますが、根本を考えたらわかるはず。
はっきり言いましょう!
男系の男子しか継承権のない天皇の血筋を、
宮家も作らず450年も絶やさせず、
しかも隠し通すなんて絶対不可能!!
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ある意味では純粋な人達なのかもしれませんね。
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フルベッキ写真を本物と断定しているトンデモ本。