「十一人の賊軍」を視聴。
令和6年11月公開の最新幕末映画ですが、
そのプロットは昭和39年のもののようで、
「十三人の刺客」と同時期のものらしい。
これは集団時代劇というジャンルのもので、
時代劇の路線に詳しい訳ではありませんが、
一人のヒーローが活躍するタイプではなく、
集団が活躍する群像劇のようなスタイル。
「〇人の〇〇」のタイトルが主流とされ、
その原型は「七人の侍」であるようで、
上記の「十三人の刺客」の他にも、
「十一人の侍」「十七人の忍者」等、
同じようなタイトルの映画が製作され、
これが様式化されたようです。
詳しくないので想像なのですが、
名作もあれば駄作もあったのでしょう。
この「十一人の賊軍」はその路線により、
脚本家笠原和夫により執筆されたもので、
賊軍が最後に全滅してしまう結末が、
東映京都撮影所の所長の意向にそぐわず、
企画が打ち切りになったものとのこと。
これを後に監督の白石和彌が知り、
東映のプロデューサーに企画を持ち掛け、
その映像化に至ったようです。
新発田藩はその地理的要因から、
奥羽越列藩同盟に渋々加入しますが、
実際は官軍への恭順を模索。
双方の軍勢が城下に迫る中で、
城代家老溝口内匠は一計を案じます。
まず同盟軍を城下に入れて疑いを解き、
同盟軍が去った後で官軍を引き入れ、
その一員に加わろうと計画。
その為に城下で両軍は鉢合わせしないよう、
官軍を足止めしなければならない。
その足止めに藩の正規兵を使うと、
恭順した際に不利になる為、
藩は10人の罪人にこれを命じました。
これに4人の藩士が目付役として加わり、
役目が終われば無罪となる事を条件に、
罪人らによる決死隊が結成。
要所の橋を守る砦で死闘が開始されます。
主演は殺人を犯した人足「政」役の山田孝之と、
目付役の藩士「鷲尾兵士郎」役の仲野太賀。
場当たりで卑怯な罪人である政と、
イカサマ博徒「赤丹」、放火罪の女郎「なつ」、
花火師の息子「ノロ」、生臭坊主「引導」、
密航未遂した医者の倅「おろしや」、
一家心中でひとり死にきれなかった「三途」、
武家の奥方と姦通した「二枚目」、
無差別殺人を犯した「辻斬り」、
地主宅で強盗殺人を行った「爺っつあん」と、
それぞれ死罪が決定した個性的な罪人達。
これを隊である家老の婿入江数馬以下、
荒井万之助、小暮総七、鷲尾兵士郎が加わり、
砦で官軍を迎え撃ちます。
これとは別に家老溝口内匠(阿部サダヲ)が、
策を巡らせ同盟軍や官軍と交渉。
藩を守る為に非道に徹し、
信頼を得る為にコロリ患者を斬首したり、
そもそも決死隊を殺すつもりだったり、
その手段を選ばない。
同盟軍、官軍共に高圧的であり、
全ての陣営に正義は感じられません。
アクションシーンに関しては迫力があり、
結構残酷な描写もあって悪くない。
但し10人とはいえ刀を使えるのは、
藩士4人の他に「辻斬り」、「爺っつあん」のみ。
但し藩士のひとりは最初の砲撃で戦死し、
剣士は5人だけというハードモード。
そんなありえない文字通り「決死」の戦場に、
城代家老の溝口は娘婿を送り出しています。
家老はこの娘婿が本当は気に入らず、
あわよくば死んでほしいと思っていた??
ツッコミどころは沢山ありますが、
細かくは野暮というもの。
どうしても気になって仕方なかったのは、
家老を誰も彼も名字の「溝口」と呼ぶ。
一門家なんで藩主も「溝口」ですけど??
官軍側は相変わらず雑な描かれ方ですが、
これはそれ程重要ではありませんし、
観る方も「慣れっこ」になっています。
その割に男前を揃えてきてますので、
赤熊のナダルが異常に目立つ。
あの岩村精一郎も皆が粗野なので、
それ程目立っていなかったのですが、
その故に玉木宏の山縣狂介がカッコいい。
こんなカッコいい山縣は他にいる??
これは様式美かもしれませんが、
決死隊は殆ど全滅してしまい、
最後に勝利した家老も最愛のものを失う。
その全ての犠牲で領土は戦火を免れます。
最後に領民が家老に対して、
「長岡みたいにならずに済んだ」と、
家老に手を合わせて感謝していましたが、
長岡市の人はどう思ったのでしょう。
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