下関市長府 長州に潜入した会津のスパイの墓

敵方の動向を探るうえでの一番有効な手段は、
スパイを潜り込ませることでしょう。

幕府は各藩に隠密を潜り込ませていましたし、
諸藩もそれぞれ京都・江戸などの各地に探索方など、
間諜を出していたらしい。
新撰組にも長州藩の間者が多数潜り込んでいたとされ、
荒木田左馬之助楠小十郎御倉伊勢武などが、
間者として粛清されています。

壇ノ浦砲台前田砲台を結ぶ山陽道に、
かつて杉ヶ谷という場所があったらしい。
片方は杉並木でもう片方は断崖という大変さみしい場所で、
そこに物乞いの(いさり、足が立たない人)がいました。

その躄は馬関方面に物乞いに出向いていたのですが、
慶応元年5月のある日、突然雷雨に襲われると、
その躄は立ち上がって走り出し、
素早く自分のねぐらに逃げ込んだという。

その光景をたまたま街道沿いの茶屋の主人が見ていて、
躄が立って走ったのを不審に思い、長府藩の奉行所に報告。
奉行所はすぐさまその躄が捕らえられ、
取り調べを行うとなんと会津の間者でした。

間者の名は神戸岩蔵
会津藩士神戸内蔵の二男で、
兄の神戸民治が刃傷事件で謹慎処分を受けており、
家名回復を望み藩の役に立ちたいと、
間諜として長州に潜入することを買って出たという。
父が江戸勤番だったために会津訛りがなく、
間諜としてうってつけだった岩蔵は、
文久3年6月23日に出発して長州に潜り込み、
馬関や長府の情報を京都の会津藩邸に送っていました。

間者は斬首されると決定していましたが、
岩蔵の態度が立派だった為に、取調役が殺すには惜しいと感じ、
長府藩への仕官を薦めます。
しかし岩蔵は
ご親切は有難いが、忠臣二君に仕えずという諺もあり、
 まして敵国の臣となるわけにはいかない
」と断りました。
そのうえで切腹を願い、叶わぬなら自分の刀の斬首を願う。
残念ながら切腹は許されませんでしたが、
望み通り彼の刀で斬首されます。

岩蔵が斬首されたのは道玄堂山という山で、
当時、牢死人を埋葬していた場所らしい。


中国電力中六波町アパート横の階段から、
道玄堂山に入れます。


階段を登ると立札が建てられており、
舊会津藩士 神戸岩蔵綱衛 墓地入口」と書かれています。


そこからは竹藪の道。


道を進むと小さな墓石が集まった場所に着く。
罪人たちの墓石でしょうか?
孟宗竹が倒れて大変なことになっています。


先ほどの墓石群があった場所が山の頂上付近だったようで、
そこから下りの道があるのですが、
四方から孟宗竹が倒れており、道と言える代物では無くなっています。
竹をかき分け道を下って行くのですが、
途中にちらほらと倒れた墓石が見られます。これらも罪人の墓なのでしょう。


舊会津藩士 神戸岩蔵綱衛」の墓。
結構下った先でやっと見つけたました。
手前に倒れた大きな墓石があるので、それが目印になります。

この神戸岩蔵の墓ですが、色々と疑問があるようです。
何故間者である岩蔵に墓石が建てられているのか?
そして、これが何故岩蔵の墓だとわかったのか?

僕なりの推測ですが、「毛利家乗」には、
会津ノ士神戸綱衛ト称スル者来リ留ル数月病死ス
とあり「病死」となっています。

基本的には密偵は殺されるというのは普通の事ですが、
にはできません。なぜなら密偵を殺すという事は、
知られたくない事をしているから。
領内に他藩士が居る事も、見聞きした事を手紙で送る事も、
別に罪ではないので、公には殺す理由にならない。
だから「病死」としたわけで、
本来の長府藩の刑場である松小田刑場ではなく、
道玄堂山でこっそり殺したのはそういう訳でしょう。

墓を建てたのは、他藩士が領内で死んだ際には、
ねんごろに弔ってやるのが礼儀であり、
公式に「病死」としているからには、
墓を建てなければならなかったのではないか?
または仕官を薦めた取調役が建てたという可能性もある。
ただ山中に点在する墓石からも、
罪人にも普通に墓石が建てられていたとも推測できます。

では何故この墓石が岩蔵の墓石とわかったのか?
昭和62年11月、長府在住の斎藤純一氏が2年がかりで、
岩蔵の墓を探し出し、翌昭和63年9月23日に、
この山で「慰霊祭」を執り行ったとされています。

すでに亡くなられた斎藤純一氏から聞く事はできませんが、
おそらく当時は墓石からまだ戒名が読み取れて、
笑山寺にあったとされる位牌の戒名と、
没年月日より特定できたと推測します。

岩蔵の所持した刀は、長府報国隊軍監熊野直介が貰い受け、
北越戦争に持って行ったとされますが、
熊野は越後今町の戦いで戦死。会津藩兵との戦いでした。

■関連記事■
忍者の国 長州??
 酷いトンデモ。未だにこれを信じてる人もいる。
幕府による長州破壊工作
 間者による破壊工作が行われています。
山城屋和助
 遊郭での情報収集という羨ましい任務。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。