久々に幕末モノの小説を読んだ。
「神剣 人斬り彦斎」は、
河上彦斎を主人公にした小説で、
作者は直木賞作家葉室麟。
既に故人のようで僕は初めて作品を読みました。
50歳から創作活動をスタートしたらしく、
66歳で死去するまでの16年弱の間に、
60作以上の作品を書いています。
河上彦斎は人斬りです。
佐久間象山以外は記録に残っていませんが、
逸話の多さから象山だけとは思えませんので、
たぶん何人も斬っているのでしょう。
そんな人は常人とは思考が違うと思うのですが、
この作品の彦斎は普通の思考を持っている。
信念に生きるストイックな人物なのですが、
作品内の彦斎の考えは理解できてしまう。
作品としては面白いのでしょうが、
違うんではないか?と違和感を思えます。
彦斎もそうですが、
神代直人等の狂信的攘夷思想を持つ者は、
新政府のやり方に不満を持つ。
攘夷とは何か?何故長州は攘夷を捨てたのか?
これが理解できない。
話の前半より聡明な思考を持っていながら、
明治期は魔法をかけたように盲目となる。
史実に沿うからこうなるわけなのですが、
これでは不自然ではないかと思う。
小説なんで仕方ないとは思うのですが、
彦斎や神代らは始めから、
盲目的に攘夷を信じて人を斬る。
そして時代に取り残されて殺されていく。
こういうのが真実なんじゃないかと思う。
作品としては司馬遼太郎の
「十一番目の志士」を読んでいる様。
天堂晋助と彦斎が被っているように感じます。
小説としては良く出来ており、
実在の剣豪達と斬りあったり、
重要人物と会ったりでとても面白い。
・・が「人斬り」としての人物像では無いので、
少し不満が残ってしまうかもしれませんね。
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池上本門寺の高田源兵衛(彦斎)の墓。