「毛利敬親」役 金田龍之介と北大路欣也

花神」を見て・・・。
毛利敬親は、バカ殿と賢君の狭間の中に存在する人だと改めて感じます。

賢君とは何か?文字通り賢い殿様と言う事なのでしょうが、
幕末で言えば、島津斉彬徳川斉昭松平春嶽などが浮かびます。
彼らは自らどんどん行政改革を実行し、自ら行動するタイプで、
とってもわかりやすい殿様ですね。

とはいえ、組織のトップとは、そういうものでしょうか?
やはり人の上に立つには、下の人間を使いこなしてこそのトップではないでしょうか?
また、下の人間への愛も必要と言えます。
その点、毛利敬親は自ら何かをしようとしませんが、
下の人間が精力的に行動できる環境を作ったともいえます。

「そうせい!」
簡単な事かもしれませんが、自らと組織の運命をゆだねるその言葉は、
常人では簡単に発する事は出来ません。
トップにとっては、現状維持が一番楽なのです。
自分の愛する家臣たちが、情熱を持って進言するその案に、
自分の進退を賭けて、すべてをゆだねる事。
相当の覚悟の要る言葉です。

さて、「花神」の金田龍之介演じる毛利敬親も、たくさん「そうせい!」と言っています。
けれどその演技にひとつも同じものが無いのはお気づきでしょうか?

家臣の進言に対してなるほどと納得した上で、成功に確信を持って
「そうせい!」と言ったものもあれば、
家臣の進言を聞いて、ベストではないがベターだなと納得して、
「そうせい!」と言うパターン。
家臣の進言を聞いて、そうせねばならぬのかと苦悩しつつ
「そうせい!」とつぶやくもの。
特に、家臣を処刑せねばならぬと進言されたときの落胆した
「そうせい!」は、ほんとに自分の家臣を愛してるんだなと感じ取れます。
しかし、ただボーっと見てるだけでは、バカ殿に見える人もいるでしょう。
それが名優金田龍之介の演技です。
毛利敬親とは、どっしり構えて家臣らの意見に耳を貸し、自らは何もせずに愛する家臣らに、
自らの進退を委ねることのできる親分肌のお殿様なのです。

さて、来年の大河ドラマ「花燃ゆ」の毛利敬親は、北大路欣也です。
彼もたしかに名優ですが、はてさてこの毛利敬親を上手く演じることは出来るのでしょうか?
島津斉彬や徳川斉昭、松平春嶽を演じるならば、全く問題なく演じきれることは出来るでしょう。
他の名君は「」の役柄といえますが、毛利敬親は、「」の役柄です。
北大路欣也のなにかやりそうな目力は、「動」の役柄は向いていますが、
「静」はどうなんでしょうか?

とはいえ、名優と云われる北大路欣也。
僕の心配をよそに素晴らしい毛利敬親を演じるかもしれません。
「金田龍之介の毛利敬親」というあまりにも高いハードルを超えることができるでしょうか?

先を見越したような表情で、「そうせい!」とだけは、言って欲しくないものです。

※※以下は移設前のブログでの投稿。 金田龍之介氏のご子息から投稿頂いたものです。移設にあたり残念ながらコメントまでは持っていけなかったのですが、このまま消されるのは忍びず、コピーして下記に残します。

コメント
by 花神ファン April 28 [Tue], 2015, 22:12
「花萌ゆ」が幕末で1977年の大河「花神」が懐かしいです。
ブログ主さんは73年のお生まれですからOn airでは無理だったのでは?
わたくしは当時19歳の浪人生でした。大河は好きでなくほとんど見なかったのですが
主役が「遠山の金さん」で大好きだった梅之助さんでしたので、続けて見ることができました。
幕末の若者たちの苦闘は学問も戦闘もたいへん魅力的でした。
篠田三郎さんの松陰先生には痺れました。ドラマ史上に残る名演だったと思います。
“そうせいこう” についての分析、素晴らしいですね。おみごとです。
ここまできちんと評価して頂ければ演者も嬉しいでしょう。
わたくしは2009年に没した金田の息子ですが、とても有り難く病床の母にも、これから伝えさせてもらいます。
どうも有難うございました。

by kii April 29 [Wed], 2015, 1:31
え?息子さんなのですか?コメント頂き光栄です。
お察しのとおり僕はリアルタイムでは見ておらず、ネットで拝見しました。
原作である司馬遼の「花神」「世に棲む日々」「十三人目の志士」を読破して、レンタルビデオ屋にも置いていない大河「花神」をどうしても見たいとネット上で探してやっと見ることができたのです。

幕末長州は、「そうせい候」あっての長州だったと思います。
松陰、晋作、大村らが活躍できたのは、「そうせい候」が治める長州であったからでしょう。
薩摩でも、土佐でも、佐賀でも彼らは活躍できなかったと思います。
歴史を理解できない連中は、毛利敬親を凡君とか暗君とか言っていますが、浅はかという以外言葉がありません。現代の企業で言い換えれば、ワンマン社長が引っ張っていく会社もあれば、優秀な社員の提案をどんどん採用する社長の会社もあります。毛利敬親の治める長州藩は後者のタイプでしょう。
そういうことで金田龍之介氏のセリフに着目致しました。するとそのたった4文字のセリフの違いを見事に使い分けていることに気づいた次第です。「そうせい!」でさまざまな愛情を表現する様に身震いするほどでした。

「花燃ゆ」は現在の段階で、北大路欣也氏は4度「そうせい!」を言っています。比較的長州が穏やかな時期の「そうせい!」なので、それほどの違いはありませんが、心配していたほどの違和感はありませんでした。
「花神」を見て演技の参考にしている出演者もいると思いますが、北大路欣也氏ならば、確実に「金田龍之介の毛利敬親」を参考にしているはずですね。

「花神」もしかりですが、「子連れ狼」も再放送しか見ておりません。
そんな若輩者ですが、素直に「金田龍之介演じる毛利敬親」をすごいと感じたので、ブログの記事にさせてもらった次第です。
ご訪問・コメントありがとうございました。

by 花神ファン April 29 [Wed], 2015, 18:41
Kii様、お返事有難うございます。貴ブログを印刷し母にも見せましたところ、
大層よろこび、感謝しておりました。
Kii様のような鑑賞眼は演じる側が求めても得難いものです。
母に読ませましてから父の仏壇に供えさせて頂きました。
「子連れ狼」は原作の漫画をどこかで見聞きして、みずから志願して出演したものです。
恥ずかしながらわたくしは「子連れ」をまだ見ておりません。当時なんとなく気恥ずかしく見ないでいたものが、そのままになっております。
父は悪役の印象が強かったのですが、晩年は様々な境遇に置かれた人間の
「あたたかみ」のようなものを演じ出せていたと思います。
Kii様のお褒めを拝見しまして、見てくださる方は分かってくださる、と感謝いっぱいです。
心よりお礼を申し上げます。 
金田 拝

by kii April 30 [Thu], 2015, 0:38
まさが僕のブログの駄文が印刷されて、感謝されるようになるとは、
夢にも思っていませんでしたので、気恥ずかしいかぎりです。
僕に限らず「金田龍之介」という役者が好きだった人はたくさんいますし、
もっともっと的確な評価をされる評論家もいることでしょう。
そしてなにより長年にわたる数々の作品での活躍で、その実績が証明されています。

これからも「花燃ゆ」のレビューをブログに書いていますので、
毛利敬親の演技について触れることもあると思います。
その際、お父上の名前を拝借させていただくかもしれません。
またブログ本文では、役者名は「さん」や「氏」などの敬称は付けておりませんので、
ならびにご了承下さいませ。
「袖触れ合うも他生の縁」とは申しますが、袖触れ合ってさえいない当ブログの記事が、
名優金田龍之介氏の仏前に供えられたこと、誠に光栄に感じております。

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