不謹慎ながら災害で富を得る業界がある。
それは古今共に同じ事。
災害によって破壊された物、
不足している物は需要が出てくるわけで、
当たり前の事なのです。
現在は災害で儲かったなど、
不謹慎で口にしませんが、
実際に儲かっている企業はあるわけですし、
災害によって傾きかけていた屋台骨が、
復活したという企業もある。
災害にあわれた方々の手前、
大声で儲かった!と口には出せませんが、
助かった経営者もいることでしょう。
反対に直接的な被害に遭わなかったのに、
以降の商売が下火になった業種もあります。
飲食業や観光業なんてその典型でしょう。
安政当時も同じようなもので、
「はやりもの、おあいだ」が分かれました。
当時は不謹慎などおかまいなし。
地震当時の「はやりもの、おあいだ」が、
錦絵で描かれています。
「当時はやり物」と「当時おあいだ」。
「当時はやり物」は、
屋根屋 瓦師 わらじ屋 車力 天ぷら屋
一膳飯屋 荒物屋 鳶の者 上方材木屋
こて療治 畳屋 付売 大工 人ト入
半天屋 佐官 穴蔵
「当時おあいだ」は、
見世もの 紋物屋 懐石料理屋 猿廻
茶の湯師匠 芸者 稽古所 役者
三味線屋 唐物屋 貸本屋 売暦 船宿
巻絵師 たいこ持ち 囲い者
小間物屋 呉服屋
こんな感じで明暗分かれています。
両者を比べてみれば一目瞭然。
必需品か嗜好品かですね。
平和で安定してる時には、
比較的に嗜好的なものが繁盛します。
必需的なものは大して売れないもので、
これらを作るのは多数の庶民でした。
しかし災害で世の中がひっくり返り、
必需品の需要が増えるのです。
それはまさに富める者と富まぬ者の大逆転。
大厄災である地震の後に福が訪れるのです。
では「おあいだ」業種は踏んだり蹴ったり?
いえいえ「はやり物」が富を得ると、
必然的に嗜好的に金を使うようになり、
「おあいだ」も緩やかに回復していきます。
つまり世の中をリセットするようなもの。
身動きの取れない世の中を、
災害によって一度ゼロに戻し、
はじめからやり直すのです。
「市中宝之山」。
地震の元凶大ナマズを踏みつける大黒様。
打出の小槌から庶民に小判が撒かれます。
地震の結果で福が来るという絵。
現代人の感覚では考えられない不謹慎な絵。
しかし災害の負けない生命力を感じます。
そして何よりもプラス思考。パワフルです。
被害に遭われた方々がいらっしゃいます。
死がより身近であった江戸時代の人々と、
我々が同様の感性になることはできません。
ただやはり前を見る事の重要性は、
見習うべきところではないでしょうか?
■関連記事■
・佐賀県唐津市 唐津城
防風林は津波からも我々を守ります。