司馬の短編集は、幕末、戦国、その他入り混じったものが多い。
この「故郷忘れじがたく候」もそのひとつ。
タイトルの「故郷忘れじがたく候」は、豊臣秀吉の朝鮮出兵のときに、
捕虜となって日本にやってきた李氏朝鮮の陶工たちの運命を描いた作品。
その他、「斬殺」、「胡桃に酒」が収録されています。
「胡桃に酒」は細川ガラシャのお話です。
「斬殺」だけが幕末モノで、世良修蔵の話。
世良は59万500石の仙台藩に、たった200人の兵と公卿3人で乗り込み、
仙台藩を動かして東北を平定しようとする。
元々佐幕的であった仙台藩は、この少なすぎる兵と居丈高な世良に、
不信感と敵意を感じる。
そんな事は意に介せず、高圧的に仙台藩の出兵を催促するが、
仙台藩はのらりくらりと出兵を拒みます。
着々と奥羽列藩同盟が成立していく中、
蚊帳の外で一人奔走する世良。
仙台藩内では、世良を斬る準備が整いつつあった。
・・とまあこんな話。
主人公の世良よりも、仙台藩の右往左往が面白い。
世良に対しての感情や、東北人の気質、旧来の軍備など、
司馬の文書の面白さが冴える短編です。
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