タイトルに惹かれてブックオフで購入しました(100円)。
高杉晋作のクーデターが成功に終わった後から始まります。
藩政府を乗っ取り人事を一新し、
自派の連中によって枢要ポストを占めた時点で、
自分の役割は終わりだと潜伏していた桂小五郎を呼び寄せます。
晋作は「古い家を叩き壊すのは得意だが、
新しい家をつくるのは苦手だ」と、さっさと四国に亡命してしまいます。
(馬関を開港しようとして暗殺から逃げる為ですが・・)
残されて後を託された桂は戸惑います。
桂は禁門の変以降は潜伏して、長州の一大事に全く関わっていない。
「後でまた来る。ちょっと待て。の桂」と卑怯者の烙印を押されている状態。
何の役にも立っていない男が、いきなり晋作のお膳立てで政権を握ることになる。
反発は必至の状態で萩に戻ります。
たしかにそうですよね。
普通ならクーデターの指導者が政権の座にすわるのがあたりまえ。
清教徒革命ではクロムウェルが、
フランス革命ロベスピエールが、
アメリカ独立戦争ではワシントンが、
ロシア革命ではレーニンが、政権の座にすわっています。
クーデターは、自らの命を賭けるて行うギャンブルのようなもの。
失敗すれば反乱の首謀者としての死が、
成功すれば政権を握れる指導者の地位が待っている。
この命を賭けたギャンブルで得られる報酬(政権)を、
「いらない」と言って手放す人間など他にいるでしょうか?
晋作の魅力はそういうところですよね。
さて、お話は関が原以降からの長州藩の財政改革にまでさかのぼります。
代々藩主の改革失敗と村田清風らによる天保の改革。
こららを丹念に語った後、桂による大改革が始まります。
最終的に獅子の廊下で、藩主に一任された改革を発表し、
長州藩は軍政・経済改革を成し得るというお話。
他の歴史小説で語られるエピソードは除外して、
経済という観点から書かれているというのは非常に面白い。
「割拠」という意味は、非常に重いもので、
政治的に独立するということは、経済的にも独立しなければならないという、
当たり前のようで忘れがちな主題なのです。
人物描写の一部に?という部分はあるのですが、
改革や経済の側面に集中した、
なかなか面白い視点で書かれた作品でした。
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