「幕末」司馬遼太郎②

/②

前回の続き

「祇園囃子」
十津川郷士浦啓輔が土佐の山本旗郎と共に、水戸藩士住谷寅之介を暗殺します。
師の尊敬する人物を斬る心の葛藤。
名も言わぬ大物達との会見。そして、おしかけ女房。
暗殺後、山本は住谷の子息に仇討ちされる。
これが最後の仇討ち(異説有り)となります。

「土佐の夜雨」
吉田東洋暗殺事件。上士と郷士の軋轢は、対立に発展します
当時の土佐藩の事情と、違う立場の人間の心情が描かれてます。

「逃げの小五郎」
暗殺事件ばかりのこの本ですが、この話は暗殺から逃げ延びた桂小五郎を主人公にしています。逃げて逃げて逃げまくります。

「死んでも死なぬ」
高杉晋作登場です。でも主役は井上聞多です。
でも晋作のかっこいいエピソード満載のお話です。
中でも宇野東桜暗殺のくだりは鳥肌モノです。
お話の最後、聞多はなます斬りにされますが、母と蘭学医のおかげで助かっています。

「彰義隊胸算用」
彰義隊の話。彰義隊といっても一枚岩ではありませんでした。
渋沢成一郎派と、天野八郎派に分かれて対立。
上野陥落後は、榎本艦隊とともに箱館まで戦うが、派閥争いは未だ続き、榎本武揚は頭を抱えています。

「浪華城焼討」
再び高杉晋作登場です。主役の田中顕助は初対面で、弟子入りを志願します。
大阪城焼き討ちと将軍暗殺を計画しますが、もちろんのように失敗。
新撰組に狙われますが、なんとか逃げのびます。

「最後の攘夷志士」
田中顕助がまたも主役です。
三枝蓊という時代錯誤な攘夷思想を、未だ強く持つ志士に振り回されます。
とうとう三枝は英国公使を襲撃してしまいます。

これだけの暗殺事件の話をまとめているが、筆者があとがきで書くように、暗殺によって時の流れは変えられません。(唯一桜田門外ノ変は歴史を変えた)

「暗殺だけは、きらいだ」。
筆者のあとがきの冒頭の言葉と、文末の暗い華やかさという相対する言葉が、
とても印象的な短編集です。

/②

■関連記事■
「燃えよ剣」司馬遼太郎
 土方歳三が主人公の司馬作品。
「新撰組血風録」司馬遼太郎
 新選組を題材にした短編集。
「殉死」司馬遼太郎
 乃木希典を題材にした小説。
「世に棲む日日(四)」司馬遼太郎
 幕末長州を描いた長編小説。
「酔って候」司馬遼太郎
 幕末の雄藩藩主を題材にした短編集。
「最後の将軍」司馬遼太郎
 徳川慶喜が主人公の司馬作品。
「人斬り以蔵」司馬遼太郎
 司馬の短編集。幕末以外の作品も。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です