「酔って候」司馬遼太郎

最後の将軍」で感じた殿様達の幕末をもう一度、この本で感じてみます。
4話収録の短編集「酔って候」。

土佐藩主山内容堂、薩摩藩国主島津久光、宇和島藩主伊達宗城
佐賀藩主鍋島閑叟のお話です。

酔って候
藩主一門の日陰者であった若き容堂が、
前藩主の急死によりいきなり藩主に祭り上げられる。
吉田東洋を起用し藩政改革を進め、将軍継嗣問題では井伊と対立して隠居。
藩主の座を譲っても、藩政に影響を与え続ける。
人々は容堂を「四賢候の一人」と賞賛。しかし彼は郷士を人とは思わず、
郷士出身の自藩の尊攘派首魁である武市翠山ら土佐勤王党を弾圧します。
時代は風雲急を告げ、容堂の周旋とは無関係に藩は倒幕に向かう。
酒を愛したこの男は、ひたすらに飲み、脳溢血で障害を終える。

きつね馬
薩摩藩は、藩主に超愛された側室おゆらが、自分の子を次期藩主にしようと画策。
その子が久光であった。しかし、この藩内闘争はおゆら側が敗北し、
賢候島津斉彬が藩主となる。おゆらは諦めず、斉彬の子を次々と呪詛等で殺し、
斉彬も後継を久光の子に決め、毒殺?される。そして久光は藩主の父(国父)となり、
賢候であった前藩主に比べ、能力も思想もなく、ただ、出世欲の塊であった久光は、
周りから浮き、家臣である大久保、西郷らによってうまく使われてしまう。

伊達の黒船
ひょんなことから、手先の器用さだけが取り柄の裏借家人嘉蔵が、
賢候と知られた伊達宗城の発案「黒船を我が藩の手で造る」により、
蒸気船建造を担当する。 嘉蔵は身分の低いまま下人のように扱われ、
無能な監視役に足を引っ張られながら蒸気船を完成させる。
(この話は藩主が主役ではなく、裏借家人の嘉蔵が主役です)

肥後の妖怪
幕末は風雲急を告げ、300諸藩は大なり小なり嵐に巻き込まれてたが、
佐賀藩はそれにあてはまらなかった。佐賀藩主鍋島閑叟は、
藩の武士道の基本であった葉隠に疑問を持ち、
精神論よりも一挺の旋条銃であると、藩内を近代化していく。
二重鎖国とよばれた1藩独立主義で、銃、大砲、蒸気船、
要塞と佐賀藩を近代化させる。その不気味さは、
他藩や公卿からは妖怪のようであった。

四者四様の藩事情や人物像。どれも幕末維新の主役ではない。
しかし、図らずとも変革に絡まれてゆく。志士達だけで、維新はなりたたず。
大名は偉くても腐っても大名であり、その名は轟きます。
彼らの父以前の時代、大名の使命はただ一つ「世継ぎを残すこと」であった。
けれども彼らの使命は違ったようである。
それは、いったいなんだったのだろうか?

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