久々に読みました。

東京に飛行機で日帰り出張(酷!)がありまして、
その道中に読む本を用意してなかったので、
本棚から取り出したのが「世に棲む日日」の4巻。
吉田松陰と高杉晋作を書いた「世に棲む日日」の最終巻です。
長州の藩論は佐幕派となり、晋作はクーデターを企てますが奇兵隊は賛同しない。
結局、わずかな兵で功山寺で挙兵し、その成功を知って諸隊も参戦する。
地元の農民まで合流して、革命は成功。
晋作は軍部の最高責任者を打診されたが、それを蹴って妾と逐電。
大坂、四国と廻った後、ひょっこり下関に戻る。
幕府が長州征伐に乗り出し、晋作は海軍総督として幕府と戦う。
しかし、勝利目前で肺結核が悪化し死去。
まあ、こんなストーリーです。
久々に読んでの感想ですが、
長州内訌戦のあたりは、司馬の文面が冴え、すばらしい出来です。
数々ちりばめられた余談も、魅力的でした。
中でも、路上で村の娘とむしろの上で、逢瀬を交わす奇兵隊士の上を、
馬に乗ったまま飛び越え、「乗り打ち御免」と言って去っていった逸話はお気に入り。
晋作が、下関から奇兵隊が駐屯する大田に向かう途中の出来事。
隊士は、馬が自分を飛び越えたとき初めて気がつき、
「あれは高杉先生ではないのか」と、むしろの上にすわりなおし、
遠ざかってゆく晋作の後ろ姿を、しばらく呆然と見ていた。
この話は屯営でひろめられ、滅多に笑わない山県が腹を抱えて笑ったというもの。
これは司馬の創作でしょうか?それともそういう言い伝えがあるのでしょうかね?
誰か知りませんか?
どちらにせよこのシーンをどこかのドラマで見たいものです。
内容が内容だけに大河では無理かな?
その後、四国に逃亡し、帰ってきて嫁と妾との三角関係に悩みます。
その辺まで、とても良い作品だと思います。
・・が、その後の幕長戦争が適当に書かれすぎ。
開戦から晋作の死までたった36ページしか書かれていません。
なんなんでしょうか?司馬の創作意欲が尽きたとしか思えません。
同じ司馬の作品「花神」の主人公大村益次郎も出てきませんし、
野村望東尼を救出した逸話も端折られてます。
連載の打ち切りでも告げられたのでしょうかね?
酷評となりましたが、他藩とは違う長州藩というものを知るうえでの入門編としては、
松陰→晋作と主人公が変化するこの作品はうってつけだと思います。
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