図書館には新しい本も古い本もあります。
特に閉架書庫には年代物もありますね。
今回の萩原新生著「長州征伐」は、
昭和16年のものでした。
真珠湾攻撃のあった年です。
表紙を開けてみると、
僕の務める会社の取引先の先々代が、
皇紀二千六百年奉祝記念に、
下関図書館に寄贈したものでした。
こういう古書は現代語ではないので、
慣れないと読むのに疲れます。
「高杉が居るぢゃらう。こゝへ出せ。」
「さうか、まさか嘘ぢゃあるまいなう。」
なんて会話が交わされます。
とはいえ慣れると意外と読めました。
禁門の変から内訌戦、
そして幕長戦争を書いた小説ですが、
主人公は高杉晋作。
そういえば晋作メインの本を読むのって、
かなり久しぶりです。
登場人物が生き生きと描かれ、
読み物として面白いものでした。
出てくる人物も詳しく書かれているので、
相当資料を集めたと推測できますね。
さてこの中の「凱歌挙がる」の章に、
「女丈夫お浪」という話が出てきます。
幕軍が少年を長州に潜り込ませ、
その手伝いをしたもう一人の少年が、
姉のお浪にそのことを打ち明けると、
お浪は情報が漏れた事を長州陣営に伝え、
自分は薙刀を手に白馬で敵陣に向かいます。
許嫁の膺懲隊赤川敬三は、
その知らせを聞いて幕軍に攻め込み、
幕軍が総崩れで退却する中で、
殿軍を追う女武者を発見。
お浪は女ながらに薙刀を振り回し、
激しく敵と渡り合いますが、
敵に囲まれ打ち取られる瞬間、
赤川の隊が助けに入るという話。
創作なのでしょうが、
他に初耳のものが無いだけに、
これだけ完全な創作ってのも不思議。
内容が内容だけにアクセントを入れたのか?
芸州口の津田村の戦いの話のようですが、
赤川敬三も参加しています。
創作といえはこんな話もありました。
奇兵隊士本田虎之助が大里の戦いで戦死し、
姉のおよしとおくまが仇を討ちたいと、
奇兵隊に入れてくれと晋作に頼み、
晋作が快く二人を奇兵隊に入れるという話。
本田虎之助が大里で戦死した記録はあり、
記載の日付(負傷3日死亡4日)も合ってる。
但しそんな姉妹の話は初耳です。
これも創作?かなりセンスかあります。
晋作が女性を入れたという話はありますし、
元ネタがあったのかもしれませんね。
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