井伊直興の墓所は彦根藩歴代藩主とは違い、
臨済宗永源寺派の大本山永源寺にあります。
臨済宗、黄檗宗の十五本山のひとつで、
全国に127の末寺を擁す古刹寺院。
南北朝時代の近江守護職六角氏頼が、
高僧寂室元光禅師に帰依し、
領内の勝景地雷渓を寄進して伽藍を創建し、
氏頼の法名雪江宗永と氏族の源氏から、
永源寺と命名されました。
愛知川に掛かる大歇橋を渡れば境内霊域。
その先には120余段の羅漢坂です。
「総門」。
延享7年(1746)再建の総門。
ここからは有料です。
井伊直興の墓はこの総門の手前。
参道から逸れた石段の先に、
井伊直興の墓がありますが、
墓域の門は閉ざされて非公開。
とはいえ外から墓を観る事ができます。
「長壽院正四位上前羽林
中郎將覺翁知性大居士」。
4代藩主井伊直興の墓。
直興の墓は松雲寺にもありますが、
松雲寺のものは遺髪墓で、
遺骸はここに埋葬されています。
直興は永源寺86世南嶺慧詢に帰依し、
生前から寿塔として墓が作られていました。
直興の墓の隣にある側室8人の合葬墓。
松雲寺にも側室合葬墓がありますが、
直興は正室を持たなかった為、
隣に側室の墓が建てられたようです。
「松源院」。
こちらも側室の墓ですが、
先の合葬墓にも松源院の名があるようで、
同じ墓所に墓が重複しています。
たぶん遺骸の埋葬された本墓なのでしょう。
一応目的は果たしましたが、
名刹寺院を前にこのまま帰れませんので、
ここからは永源寺観光です。
「山門」。
享和2年(1802)に建築された山門。
楼上には釈迦如来、月蓋長者、善財童子と、
十六羅漢が祀られているという。
「本堂(安心室)」。
本尊の世継観音が祀られている本堂。
大屋根は琵琶湖の葦で葺かれており、
約10年ごとに葺替えを行われるという。
現在の建物は明和2年(1765)の建立で、
彦根藩井伊家の援助によるもので、
以降も何度かの改築が行われています。
「法堂(大雄宝殿)」。
後水尾天皇寄進の釈迦如来、迦葉尊者、
阿難尊者の三尊を安置し、
古例の法要を行う仏殿も兼ねているという。
「開山堂(大寂塔)」。
開山寂室禅師の墓所の上に建てられおり、
現在の建物は彦根藩8代井伊直惟により、
※7代、9代とも数えられる。
能舞台の寄進を受けて改築したものという。
「教蔵(毘盧寶蔵)」。
延宝4年(1676)建築の教蔵で、
南嶺禅師が明より購入した大蔵経を納め、
転輪蔵の考案者である傅大士と、
普建、普成の二童子が祀られています。
「僧堂(専門道場)」。
永源寺の奥にある修行僧らの道場。
近年火災で焼失したようですが、
他方からの寄付によって、
平成27年に再建されています。
永源寺は紅葉が有名とのことですが、
訪問時は初夏。
それでも新緑が美しく映え、
十分に名刹を堪能できました。
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