東京都港区　光林寺/ヒュースケン墓所他

光林寺は東京都港区にある臨済宗の寺院。
丸亀藩４代藩主京極高豊が開基し、
不生禅を説いた禅僧盤珪永琢の開山で、
延宝６年(1678)麻布谷町に創建され、
元禄７年(1694)に現在地に移転しました。

「光林寺」。
本堂は寛政元年(1789年)に再建されたもの。
樹木希林の葬儀も行われたようで、
本人がここでの葬儀を希望したとされます。

裏手には比較的大きな墓地が広がり、
京極家、秋月家、宗家、松浦家、朽木家、
大給松平家、板倉家等の大名家の墓があり、
江戸期の隆盛の程が伺えます。

ここの墓地にヒュースケンの墓があります。

「SACRED to the Memory of
　HENRY.C.JHEUSKEN
　Interpreter to the
　AMERICAN LECATION in japan
　BORN AT AMSTERDAM January 20 1832
　DIED AT YEDO January 16 1861」。
米国通弁官ヘンリー・ヒュースケンの墓。
オランダ人でしたが渡米して米国人となり、
通訳としてダウンゼント・ハリスに雇われ、
安政元年にハリスと共に来日して、
秘書兼通訳として米国公使館に努めますが、
万延元年に襲撃されて死亡しています。
彼は日本滞在中に日記を記しており、
幕末外交史の貴重な資料とされていますが、
度々日本の混浴を見に行くなど、
敬虔なクリスチャンたったハリスに比べ、
普通の助平な若者の一面を持っていました。

「DAN=KUT
　JAPANESE LINEIST
　to the BRITISH LEGATION
　murdered by JAPANESE ASSASINS」。
小林伝吉の墓。
ヒュースケンの墓の斜め前にあります。
摂津の船乗りだったようですが、
乗船が嵐に遭遇して遭難。
米国船に救助されて清国経由で帰国する際、
出奔して一人で現地に残り、
清国に駐在していたオールコックに雇われ、
通訳として働いて英国籍を取得しました。
安政元年にオールコックと共に日本に帰国。
英国公使館で通訳として働きましたが、
洋装で英国人と称して傲慢に振舞い、
馬を乗り回して市中でトラブルを起こし、
挙句は公使館員達に日本人女性を斡旋。
市中で相当嫌われていたとされます。
安政７年１月７日。
伝吉が公使館の前で立っていると、
深編笠の２名の男が近づいてきて、
背中に短刀を突き刺して逃走。
下手人は見つかっていません。
墓碑には、
　murdered by JAPANESE ASSASINS
　訳：日本の暗殺者に殺された。
と刻まれています。
因みに裏側は禅了院傳翁良心居士と、
日本の戒名が刻まれていました。

「大照院釋獨明大居士」。
本堂横にある古河財閥創業者古河市兵衛の墓。
小野組の番頭古河太郎左衛門の養子となり、
生糸の買い付けで商才を発揮。
生糸取引を任されるようになりましたが、
小野組は倒産してしまいます。
その後は独立して草倉鉱山の経営を始め、
後に足尾銅山を買収して大鉱脈を発見。
銅生産量を急増させることに成功し、
古河財閥の基盤を形成するに至りました。

「辨理公使正四位勲三等平井君墓」。
明治初期の官僚平井希昌の墓。
長崎の唐通事を務めて英語を学び、
通弁御用頭取に任命されており、
明治元年に長崎裁判所が設置されると、
通弁役頭取に就任しました。
その後の明治４年に外務省へ出仕し、
外務少丞、書記官などを歴任。
賞勲局書記官として賞勲制度の整備し、
明治２６年に米国駐在弁理公使に任じられ、
その待命期間中に死去しました。

「正三位勲二等岩村定高之墓」。
佐賀藩出身の官僚岩村定高の墓。
明治２年に佐賀藩権大参事に任命され、
明治政府に出仕し開拓御用掛に就任。
山形県参事、三重県参事を経て、
三重県令に昇進しました。
明治１７年には元老院議官を廃止まで勤め、
貴族院勅選議員の在任中に死去。

「海軍少佐従六位勲五等菅野覺兵衛墓(中央)」。
海援隊出身の海軍少佐菅野覚兵衛の墓。
土佐の庄屋千屋民五郎の三男として生まれ、
土佐勤王党に加盟して尊攘運動に邁進。
坂本龍馬らと共に勝海舟の弟子となり、
神戸海軍操練所で学びます。
後に龍馬らと亀山社中(海援隊)を結成し、
幕長戦争では乙丑丸の艦長となって、
小倉口で長州藩を支援しました。
龍馬暗殺後にお龍の妹起美と結婚。
石田英吉の振遠隊で戊辰戦争に参加し、
維新後はアメリカに留学しています。
帰国後に海軍に入って海軍少佐となり、
海軍造船所次長として鹿児島県に赴任。
私学校による弾薬掠奪事件が発生し、
この件で海軍での立場が悪くなってしまい、
明治１７年に海軍を辞めています。
その後は開拓事業に参加。
明治２６年に病死しました。

大名家の墓は次回。