「百花春風抄」朔田浩美2

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前回、幕末漫画についてうだうだ言い過ぎて、本題に入れなかったので続きです。

少女漫画・・というか女流の漫画家の描くヒーローってのは、
「こんな奴いねえよ!!」
って言いたくなるほど顔も中身も全てが男前ですよね。
この百花春風抄の主人公高杉晋作も、もちろん超男前です。
歴史を知らない人が読んだら、たぶん「こんな奴いねえよ!」
でしょうねぇ。

でも、実際の晋作はこんな奴です。
そうだよな・・。高杉晋作ってのはこんな奴なんだよな。
女性に人気があるって理由、わかる気がしますね。

と、まあこんな奴の高杉晋作を、歴史漫画だからって気取らずに、女性目線で描いてます。

花の章は、5人の女性と晋作の恋をオムニパス形式で描いています。
5人の女性と晋作の恋・・・こんな表現をこのブログでしようとは・・・。

雅と望東尼は実在の人物。他はオリジナルキャラですね(たぶん)。
僕は実在の二人の章が好きです。
第2章 西王母の恋
晋作の方ははどうか知らないが、望東尼の方は少なからず恋愛感情があったのではないだろうか?
そんな気がします。
自分は世を捨てた尼であり、歳も離れている。
見守ることしか出来ないが、それも愛の形なのではないだろうか?
流刑になった自分を救い出した人物。
そんな白馬の王子のような事されたら普通は惚れるんじゃないかな?
野村望東尼という名前・・俗世の名前は野村モト。
たしか晋作に出会う前がら名乗ってたはずですが、
・・・東(東行)を望む尼・・・・望東尼
なんだか出来すぎの名前ですねぇ・・・。
第5章 野の花の名は・・・。
雅という人は、正妻ながらうの(谷梅処)の陰に隠れがちの人です。
僕は雅という人は、うのと似ていたんじゃないかと思っています。
うのは右を向いていろと言われれば、いつまでも右を向いているような女だと言われています。
雅もそんなタイプだったんじゃないでしょうか?
草庵に篭り世を捨てた晋作のところに、晋作の両親から通えと言われて、せっせと通います。まわりがどういう目で見ているのかも気がつかずに。
晋作の両親とも仲良くやっていて、申し分ない嫁です。
そんな雅を晋作は愛おしく思っていたはずです。
とはいえ革命家の晋作は国許に居続けるわけにはいかないし、嫁は家を守るものとされてる武士の時代ですので連れて行けるわけはない。
また、雅が家と両親を守ってる分、安心して国事に奔走できたのでしょう。
雅への手紙から雅をいたわる気持ちも見えます。
花街で遊び慣れた晋作が下関で選んだ女性は、派手で洗練された芸者ではなく、芸者ながら地味なタイプのうのでした。
雅の面影がうのにあったのかはわかりませんが、晋作はそんなタイプの女性が好みだったのでしょう。
この百花春風抄で描かれるおうのさんとお雅さんは、作者の意図かどうかはわかりませんが、とってもよく似ています。

風の章は、6人の男と晋作の友情を、オムニパス形式で描いています。

うってかわってこっちの風の章は、女性が殆ど出てきません。
坂本・桂・久坂の章は、それぞれの晋作に対する思いが上手に語られていますが、僕はオリジナルキャラ(?)の五太郎の章と井上・伊藤の章が好きです。

第4章 回天雪月花
功山寺挙兵のお話です。
一人の少年兵の目から見る英雄高杉晋作は輝いて見えたことでしょう。
晋作は少女漫画のヒーローでもありますが、庶民や少年達にとっても、ヒーローでした。どうしようもない状態のところへ、ふっと現れ誰もが不可能と思われたことをやってのける。男も惚れます。

第5章 黄金の御神酒徳利
晋作の初期の友は、久坂ら松下村塾のメンバーたちであった。
しかし、その友達も先に逝き、晋作は一人になった。
だが、晋作は井上・伊藤というかけがえのない友を得た。
3人は長州の動乱を駆け抜けた。
井上・伊藤は、弱ってゆく晋作を見てそれぞれの行動をおこす。
晋作は2人に言った。
「おまえらは二人でひとつの御神酒徳利じゃ。欠けたらいかんぞ!」
それはかつて師の松陰が晋作と久坂に言った言葉に似ている。
その後二人は伊藤の暗殺まで盟友として欠けることはなかった。
晋作・久坂の二の舞にはならず、激動の明治を駆け抜けていきました。

この百花春風抄。
オムニパスではなく晋作の生い立ちからの長編を描いて欲しいですね。
全50巻位で・・・。

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