三重県三重郡　見性寺/菰野藩土方家墓所

見性寺は菰野藩藩主土方家の菩提寺。
２代土方雄高が尾張から三霊和尚を招き、
土方家の菩提寺として創建されました。

「山門」。
山門は享保１１年(1726)に再建されたもの。

「本堂」。
禅宗の方丈建築様式の本堂。
こちらも享保１１年(1726)の再建で、
寺宝として藩主愛用の屏風、塗盥、
塗膳などの調度品、その他書籍、文献、
書画等文化財が数多くあるようです。

本堂左側から藩主墓所へ。

このような寺院裏手にある藩主家墓所は、
苔生した雰囲気がとても良い。
石段の右側をさらに登ると、
２代以降の歴代藩主家の墓があります。
※初代土方雄氏の墓は京都の功運院。

「不見院殿形道宗無大居士」。
２代藩主土方雄高の墓。
初代雄氏は京都を拠点としていましたが、
雄高は所領の菰野を拠点とし、
菰野陣屋や城下を整備した他、
藩法を制定して藩政の基礎を築きます。

「通霄院殿玄峯孤順大居士」。
３代藩主土方雄豊の墓。
初代土方雄氏の次男土方氏久の三男で、
２代雄高の娘を娶って継嗣となり、
義父雄高の死去に伴い家督を相続。
江戸で火消し大名として活躍しており、
４代将軍徳川家綱に表彰された他、
増上寺刃傷事件で改易された内藤家から、
鳥羽城の接収を行っています。

「寛光院殿仁海宗智大居士」。
４代藩主土方豊義の墓。
３代雄高の嫡男土方豊高の長男に生まれ、
父豊高が早逝した為に継嗣となり、
祖父雄高の死去に伴い家督を相続。
幕府より大坂加番を任じられていますが、
その在任中に病死しています。

「大岑院殿前丹州太守賢徳養浩大居士」。
５代藩主土方雄房の墓。
３代４代と五輪塔の墓でしたが、
５代雄房より位牌型の墓になっています。
４代豊義の長男として生まれ、
父の死に伴い家督を相続。
藩士に学問を奨励するなどしており、
３１年の治世の後に隠居しました。

「永源院殿前備州太守仁英紹劫大居士」。
６代藩主土方雄端の墓。
４代豊義の次男として生まれ、
兄雄房の養子となって家督を相続。
新しい家中諸法度を制定し、
先代同様に学問を奨励しました。

「憲徳院殿前江州太守利山玄貞大居士」。
７代藩主土方雄年の墓。
６代雄端の長男に生まれ、
父の死去に伴い家督を相続しますが、
幼少の為に政務は家臣達が行う事となり、
奸臣らによって悪政が敷かれていましたが、
成長して実権を握ると奸臣らを排除。
財政再建の為に藩政改革を行った他、
幕府との関係強化に努めました。
隠居後も実権を握っており、
派手な生活で藩財政を悪化させています。

「翫乗院殿前丹州太守松山江月大居士」。
８代藩主土方雄貞の墓。
老中田沼意次の六男でしたが、
７代雄年の養嫡子となり、
雄年の隠居に伴い家督を相続しますが、
実権は雄年に握られて藩政には関われず、
家督相続から僅か２年で死去しました。

「霊光院殿前京兆尹一灯自照大居士」。
９代藩主土方義苗の墓。
６代雄端の三男木下俊直の次男で、
※日出藩木下家分家の旗本。
８代雄貞の死去に伴い末期養子となります。
幼少の為に隠居の雄年が後見となり、
その死まで実権を握られますが、
雄年の死後に実権を得るようになり、
破綻寸前の藩財政の再建に乗り出し、
質素倹約や経費節減、
年貢米の備蓄などを行い、
一連の政策で財政再建を成し遂げます。

「見龍院殿前殿中監懿徳同応大居士」。
１０代藩主土方雄興の墓。
９代義苗の長男に生まれ、
父の隠居に伴い家督を相続します。
藩校修文館を設立して学問を奨励しますが、
僅か３年で病死してしまいました。

左「寛裕院殿前京兆尹天然自得大居士」。
右「俊良院殿雄心高志大居士」。
１１代藩主土方雄嘉の墓と、
２代藩知事土方雄志の墓。
※雄志は世外となっていますが、
　２代藩知事です。
雄嘉は父の死去に伴い家督を相続。
病弱であった為に祖父の義苗や、
一門土方義行が藩政を取り仕切っています。
彼らにより質素倹約や軍備増強など、
しっかりと藩政を担っていましたが、
雄嘉は安政５年に死去してしまい、
１２代は雄嘉の長男土方雄永が相続。
雄永も父に似て病弱だった為に、
引き続き一門の義行が政務にあたりました。

菰野藩は小藩ゆえに幕末の動乱は静観し、
鳥羽伏見の戦いの後に新政府に恭順。
東海道の警備や多羅尾代官所の接収を務め、
少数ながら戊辰戦争にも出兵しています。

雄志は分家の旗本土方家の子でしたが、
雄永の養子となっており、
明治３年に雄永が隠居した事により、
雄志が藩知事となりますが、
１年後には廃藩置県を迎えています。
東京で慶應義塾に入学した後、
工部省に出仕しており、
後に貴族院議員を経て台湾総督府に勤務。
大正期には再度貴族院議員を務め、
昭和６年に死去しました。
雄永は谷中霊園の合葬墓に葬られており、
この墓所には墓石がありません。