「司馬遼太郎は短編が面白い。」
・・・と、僕は思います。
実は司馬の長編をあまり読んだことないのです。
「竜馬がゆく」はもちろんの事、
「飛ぶが如く」も読んでいません。
4巻以上ある小説って、読もうとするのに勇気がいります。
読んだ中では、全4巻の「世に棲む日日」と、
全3巻の「花神」が一番長い部類です。
「世に棲む日日」を読んで、
途中から司馬の創作意欲が無くなったのを感じました。
それ以来、司馬の長編を読むのが怖いなと思うのです。
でも、彼の短編集は大好きです。
巧みな文章とストーリー構成、キャラクター造形がすばらしい。
短編なんで、創作意欲は満ち溢れています(笑)。
「幕末」や「人斬り以蔵」、「酔って候」など、
どれも面白く何度も読み返しています。
司馬の恐ろしさは、
史実と創作を全く同じテンションで描くことができるため、
読者が創作を史実と勘違いしてしまうことです。
そのことにより、不幸になった(?)歴史上の人物も沢山いますね。
今回読んだ「新撰組血風録」も短編集です。
新撰組を題材にした15編の短編をまとめたものです。
各話ごとに異なる実在の隊士と架空の隊士が主人公となり、
主に土方歳三と沖田総司が主要登場人物となり構成されます。
偽物を本物にしてしまう近藤勇の性格を描いた「虎鉄」。
映画「御法度」の原作にもなった男色をめぐる隊士の話「前髪の惣三郎」。
隊の重鎮を救出する為に何人もの隊士が犠牲になった「三条磧乱刃」。
沖田総司のエピソード「沖田総司の恋」「菊一文字」などが印象に残ります。
餅を七輪で焼きながら山崎の話を聞く土方歳三や、
子供と遊ぶのが大好きな沖田総司に人間味を感じます。
どの話も面白く、さすが司馬遼太郎といえる作品群でした。
■関連記事■
・「燃えよ剣」司馬遼太郎
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・「殉死」司馬遼太郎
乃木希典を題材にした小説。
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司馬の短編集。幕末の話以外も。
・「最後の将軍」司馬遼太郎
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・「幕末」司馬遼太郎
暗殺をテーマにした司馬の短編集。