長崎県平戸市 春日集落

春日集落平戸島西岸の小さな集落。
現在の人口は約70人程ののようで、
ポルトガル貿易を推進する松浦家の家老が、
集落ごとキリシタン改宗させた事に始まり、
その後に禁教となってからも、
領民は密かに信仰を守り続けていました。
維新後にキリスト教は解禁となりますが、
住民はカトリックには改修せず、
独自の信仰を守り続けたという。
その後の平成30年に世界遺産登録され、
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産
 (春日集落と安満岳、中江ノ島)

往時の景観を今に残しています。


平戸市春日町周辺。
生月大橋へ続く県道42号線は、
海岸線の断崖上を通っていますが、
大橋の手前で県道19号に分岐しており、
これが平戸島の西岸を通っています。
集落はそのすぐ南に位置しており、
現在は交通の便はそれ程悪くはありません。


春日集落」。
上の地図でもわかるように、
集落は2つの谷で構成されており、
写真はその北側の風景で、
案内拠点施設かたりなからの眺め。
県道が開通するまでは外界から遮断され、
信仰を守るには最適な場所でした。

学校では隠れキリシタンと習いましたが、
最近は潜伏キリシタンと呼ぶらしい。
維新後に信仰が解禁されると、
その多くがカトリックに改宗しますが、
これを拒否して独自の信仰を継続した者を、
かくれキリシタンと区別したようです。


春日の棚田」。
棚田は各地に存在していますが、
春日の棚田は非常に見事なもの。
平戸藩が年貢徴収目的で整備を奨励し、
大規模な棚田を形成したようで、
安満岳から流れる春日川の水を利水し、
海抜0mから150mまで、
狭い谷間いっぱいに棚田が広がっています。

上の写真は丸尾山という小高い丘より撮影。
この丸尾山頂上に石祠があります。

石祠」。
丸尾山の頂上にある石祠。
稲荷神を祀っているようで、
地元では丸尾さまと呼ばれているという。
ユダヤ人の王、ナザレのイエスは、
Iesvs Nazarenvs Rex Ivdaeorvmと書き、
頭文字にするとINRIとなりますが、
稲荷神もINARIとなりますので、
あえて中央にAを入れて、
信仰の隠れ蓑としていた説もあります。
なんでローマ字?のツッコミもありますが、
実際に潜伏キリシタンの多い場所には、
多くの稲荷が祀られているのも事実。
ちなみにこの丸尾山には、
キリシタンの墓地もありました。

春日集落を後にして県道42号線へ。
沖合2kmに位置する中江ノ島が、
もうひとつ世界遺産の構成遺産です。

中江ノ島」。
元和8年(1622)に平戸や生月で布教し、
田平で火刑されたコンスタンツォ神父
彼に協力したヨハネ坂本左衛門
ダミヤン出口ヨアキム川窪庫兵衛
ヨハネ次郎右衛門がこの島で処刑され、
更にその家族もこの島で処刑されました。
以降この島は殉教の聖地とされたようで、
春日集落などの潜伏キリシタンから、
信仰の対象とされています。
ヨハネ次郎右衛門は島に向かう船の中で、
ここからパライソ(天国)は、
 もうそう遠くない
」と言ったとされ、
民から天国への門と思われていたという。
島の湧き水は聖水として扱われ、
お水取りの儀式が行われており、
これが現在も続いているようです。

この聖なる島への上陸は禁止。
貸切クルーズ船が就航していますので、
海の上から眺めれるのみとなっています。

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