古い映画ですが「幕末」を観ました。
昭和45年の作で監督は伊藤大輔。
伊藤は時代劇の父と称された人物で、
これはその最後の監督作品とのこと。
幕末のいう一時代をタイトルとしますが、
司馬遼太郎[竜馬がゆく]を原案に、
坂本竜馬の生涯を描いています。
※作品では竜馬となっています。
主演は中村錦之助(萬屋錦之介)で、
萬屋錦之介は[子連れ狼]を子供の頃に、
何度かTVで観てはいますが、
たぶん再放送だったと思います。
古い作品故が現在の迫力ある殺陣ではなく、
アクション的には微妙な感じがするのは、
既に後世の作品を知ってしまっているので、
仕方ない事ではありますが、
これを味と感じる事も出来なくはないです。
人物の一生を描くというのは、
映像として纏めるのは困難ですが、
特に坂本龍馬の場合は賢著で、
状況が目まぐるしく変化してしまい、
これを語るのは至難の業。
武市半平太や勝海舟はチョイ役で、
岡田以蔵なんで出て来ない。
龍馬の一生を描くとそうなるのでしょう。
とはいえ作品は「死」に重きを置いており、
竜馬の行動理由も理解する事は可能。
冒頭の井口村刃傷事件は尺を取って、
竜馬の脱藩の切っ掛けとしています。
また近藤長次郎の死も大きく語り、
出番の無い平野国臣の死についても、
感情を込めて竜馬は語っていました。
土佐藩の階級差別にも声を上げ、
薩長同盟のシーンでも語っており、
中岡慎太郎との口喧嘩でも語っています。
そしてとうとう天皇の存在まで言及し、
ちょっとマズい方向に向かいそうでしたが、
タイミング良く(?)暗殺者が襲撃。
時代背景(制作時の)を考えれば、
そういうマズい方向に言及するのも、
あり得なくはないと思いますので、
仕方が無いのかなと。
変な言い方ですが、
子供の頃のTVでの時代劇の主役といえば、
杉良太郎、高橋英樹、松平健、里見浩太朗、
松方弘樹、加藤豪、北大路欣也等々・・。
成程洗練された男前揃いでしたが、
[子連れ狼]はこれらとは一線を画し、
僕にはいかつい悪人顔の人と映っていました。
そんなイメージを持ってはいましたが、
意外にも竜馬役がとても似合っています。
高い声もなかなかカッコいい。
また大御所俳優の若い頃が観れるのも、
古い映画の楽しみのひとつ。
お良(龍)役の若き吉永小百合、
お爺さんではない仲代達也、
脇役の三船敏郎等々・・。
それだけでも観る価値はあるようです。
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