江戸の佐竹の岡部さん

時代劇では辻斬りがやたらあって、
とても夜道を歩けるようなものではない。
まあTVの時代劇ってのは、
今で言う刑事モノみたいなもので、
そもそも事件がないと始まらない。
名探偵コナン」の世界では、
コナンの行く先々で殺人事件が発生する。
なんでも4~500人の被害者があって、
全てコナンの周りで起こっている。
なんとも恐ろしい世界ですが、
他の刑事モノや時代劇も似たようなもの。
視聴者もドラマとして観てるのですが、
時代劇だけに昔の話なので、
そんなものかなと勘違いしてしまいます。
特に辻斬りは無差別に襲われるので、
非常に怖いですね。

幕末期の古老等の回顧談集「幕末百話」には、
江戸の佐竹の岡部さんという話が、
掲載されています。

佐竹候の家来で百石取の岡部菊外は、
生涯に81人斬ったという。
彼は人を斬るのが飯より好きで、
新刀は7人斬らないと、
切れ味がわからないと言ったという。
最後は按摩を斬った際に呪いの言葉を聞き、
病気になって死んだとの事。

81人斬りは新撰組隊士より多いですね。
それで捕まらず・・相当周到だったのか?
はたまた達人か?なんだか嘘臭い。

・・・で秋田市の佐竹史料館に問い合わせ。
幕末の江戸在勤藩士で岡部姓は以下の3人。

岡部市之助岡部菊涯岡部丈右衛門

どう考えても2番目の岡部菊涯ですね。
でも彼は儒者詩人俳人でもあった人物。
菊涯葛原詩話遺考」「随手抄存」、
清新詩題」など、
多くの著書を残している文人です。
とても辻斬りするような人物とは思えません。

「幕末百話」は匿名で話していますので、
これは与太話かもしれません。
が、実際に久保田藩士(佐竹候家臣)に、
岡部菊涯(外)という人物は実在しており、
久保田藩中屋敷の場所も正確に語っています。
つまり岡部菊涯(外)を知っていた人が、
語った話という事は確かです。
※実際に会った事があるかは別。

推測すると以下が考えられます。
①岡部菊涯の知人が彼を憎んで作り話をした。
②岡部に恨みがある人物の作り話を聞いた。
③岡部の名でデマカセで作り話をした。
④別の人物の話を勘違いして、

 岡部の話としてしまった。
⑤デマカセで語ったら岡部菊涯という人物が、

 たまたま本当にいた。
⑥岡部菊涯の文人の顔は表の顔で、

 実は夜な夜な辻斬りをしていた。

「幕末百話」は、
明治35年に報知新聞に連載されたもの。
岡部菊涯は天保期の人物ですので、
実際に会ったことのある人物でも、
岡部と同世代とは考え辛い。
ということで①は可能性として低い。
デマカセで菊外が出るとは思えないので、
⑤もありえないでしょう。
ということで②か③か④ってとこでしょうか?

まさか⑥ってことはないでしょう。

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