高杉晋作の好物といえば「鯛」。
妻の雅や愛人のうのが、
鯛のあら煮、長州鮨、鯛の刺身、鯛の塩煮など、
鯛に関するものを挙げていますので、
相当鯛が好きだったと想像できます。
自筆の日記や手紙などが多く残されている晋作ですが、
食べ物に関してはほとんど記述がなく、
雅も「衣食住に対して頗る淡泊であった」と回想するように、
「食」というものにあまり関心が無かったのか?
それともやはり武士たるもの・・という感じで、
食物にとやかく言うのはみっともないという事でしょうか?
下関を拠点としていた晋作ですが、
フグに関しての接点もあまり見られない。
鯛が好きならフグも嫌いではないような気もしますが、
資料が無いのでフグを食べていたかは判りません。
白石正一郎が「ふくニて一酌」が大好きだったので、
(記事はこちら)
白石家で振舞われないはずはないのですが、
師の吉田松蔭がフグ食を批判してたので、
食べなかったってのも十分に考えられます。
フグに限らず鯛も下関でよく取れる魚ですけどね。
そんな晋作に、アマガエルを食べようとした逸話があります。
奇兵隊が吉田に陣屋を構え、拠点として日々整備がされていた頃、
晋作が吉田に視察に訪れました。
その頃の総督山内梅三郎や軍監山縣狂介(有朋)は、
晋作を連れて吉田周辺の奇兵隊関連施設を案内しています。
一行が遠馬を終えた帰路、森永という肴屋に立ち寄り、
宴会を行うこととなりました。
山縣は炊事場のおりんさんという女性に声をかけ、
「この中に蓮台寺の池の肴を入れてあるから料理してくれ」
と言って重箱を手渡します。
この日の遠馬に持っていった弁当はこの肴屋が作ったようで、
晋作はその弁当が気に入っていたと山縣は伝えました。
うれしく思ったおりんさんは、重箱を開けてみると、
中にはコイやフナではなくアマガエル!
驚いたおりんさんは、
こんな悪戯をするのは高杉さんに違いないと、
晋作の許へ行って詰め寄ります。晋作はあわてて、
「おりんさん。あの重箱の雨蛙。あれを今日は料理しておくれ」
と真剣に言いますが、おりんさんには通じない。
実は晋作の上海渡航時の話が遠馬中に話題となり、
夷人達がカエルを食用としている噂があるということなので、
では雨蛙を取って食べてみようという事になっていました。
おりんさんはその話を聞いても納得せず、
「ご冗談はかり・・あれは背戸川に捨てました」と言ったので、
晋作はとても残念がったという。
・・とまあこんな話なのですが、
奇兵隊開闢総督で藩の重鎮である晋作を、
現総督や軍監が接待してる様子と、
その重鎮である晋作に詰め寄るおりんさん。
こんな悪戯をするのは高杉さんに違いないという発想・・。
庶民は晋作をどういう風に思っていたのやら。
中間出身の山縣はともかく、山内梅三郎は寄組士ですが、
アマガエルを食べようなんてよく同意したものです。
開闢総督が言うんじゃ仕方ないと思ったのかな?
夷人達が食用としたというカエルは、
ウシガエルのような大きなカエルだったでしょうし、
あの小さなアマガエルを食べてみようとは、
なんともチャレンジャーですねぇ。
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