初番手行日誌⑩

つづき。
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四月七日。上様は瑞聖寺に御参謁。
お供を無事に済ませる。
昼九ッ半頃に御帰殿された。
夕飯後に能見隆庵井上平右衛門を訪問。

四月八日。非番。朝に銃陣稽古。
昼飯後に下馬まで行ったらしい。
今日は玄猪之御祝詞。夜は下番。
十月亥日に餅を食べる行事。
四月九日。上様は少々お風邪気味の為、
お帰りにならないようだ。
麻布の御前様へ御使者が来たらしい。
※これは定広の正室銀姫でしょう。
晩に飛脚が来て回復したとのこと。
御悦なり。

四月十日。上様の風邪が全快につき、
午前中にお帰りになった。
麻布御前様の胸中をお察しする。
朝飯後桂氏を訪問。
また木梨彦右衛門を訪問。
夜中に少々読書。

十月十一日。当番。
上様からのお話があった。感涙流袖。
御道中から御飛脚が来る。

十月十二日。非番。朝に桂を訪問。
撃剣六~七本。昼は桂方で食べる。
午後は銃陣訓練。夜は閑居して読書。

十三日。当番。書経の会で少々論ず。
毛利氏が訪問。少々話す。
毛利登人
十四日。非番。芝增聖寺御法事。
増上寺の事。
今日は下馬をよく観察した。
夜に桂を訪問。乃木生も来て話す。

十五日。当番。上様からお話があった。
十六日。非番。撃剣。夜に清水清太郎来る。
※清水は後に加判役となりますが、
 俗論党の台頭で謹慎となり、
 功山寺挙兵後に報復処刑されています。

十七日。当番。上様が御乗馬された。
阿波公からの名馬風早が来る。
十八日。非番。朝馬に3回乗った。
夕飯後に加番の事について話す。
十九日。当番。他に何も無し。

廿日。上様より御内命有り。
ヨーロッパ行の事である。
国許調役岡崎藤右衛門を訪問。
諸事を頼む事となる。
夕飯後に桂と領国の河長に入る。
芸妓を呼んで夜五ッ時まで飲む。
竹輿に乗って帰る。愉快であった。
※桂と2人でお祝い。楽しそうです。

廿一日。当番。無他儀。
廿二日。非番。尊父より書簡が来る。
航海行のことであった。実に落涙々々。
※父からヨーロッパ行についての手紙。
 激励の言葉だったのでしょう。

廿三日。当番。書簡の会で講釈致す。
昨日杉徳輔が来着。
是また航海行の命で来ている。
※ヨーロッパ行に選ばれたのは、
 晋作と杉孫七郎の2名でした。

廿四日。朝撃剣。夕飯後途中迄差す。
書簡を認む。

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以上で日記は終了。
日記は番手務めの日常が綴られ、
桂小五郎との仲もよくわかります。
期待したヨーロッパ行は立ち消え、
杉徳輔だけが選ばれてしまい、
そのショックで日記は終了。
残念ながら心中は書かれておらず、
途切れた日記より推し量る他ありません。

次は遊清五録もやりやいところですが、
日記は結構気合が必要なので、
いつになるかはわかりません。

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