安政3年7月1日。
早朝出立。
伊勢神宮も近く街道筋もにぎやか。
特に①松坂は賑やかで海も近く、
三重県松阪市 松坂宿跡
生魚の売り物も多く繁盛している。
松坂の三井本家を見て建物の大きさに感心。
※松坂は三井家発祥の地。
1里半歩いて②櫛田で昼食。
③明星を経て④宮川の渡しを通り、
⑤山田の高向辻太郎の宿で宿泊する。
安政3年7月2日。
宿の手代に献供料200疋、
祈祷料白石夫婦分12匁と、
下男分6匁を渡し、
他に昨夜から明日の昼までの滞在費として、
肴代100疋と土産の煙草2玉、
硯石の文鎮を渡す。
※土産を渡しているところをみると、
知人の宿と思われます。
硯石の文鎮とは、
赤間硯の石で作った文鎮でしょう。
安政3年7月3日。
朝、沐浴のうえ身支度を整え⑥外宮へ。
手代の案内で摂社や末社の全てに参拝。
昼頃、高向の宿へ戻る。
お祓大麻箱入りお供え物、盃、短冊挟み、
色紙を土産に貰い、
夕方頃に山田の孫福館太夫の宿に向かう。
神宮へのお供物料1両と、土産の煙草3玉、
硯石の文鎮を渡す。
※孫福家にも土産を渡しているので、
ここも知人の宿なのでしょう。
安政3年7月4日。
朝、沐浴して⑦内宮へ参拝。
念願の伊勢神宮参拝で有難さに感激。
孫福家より曳いてきた新馬1頭を奉納する。
長州豊浦郡赤間関竹崎浦白石正一郎藤原資興
同妻もと女献供云々、新馬云々・・
の祝詞があり、お供やお神酒を頂く。
外宮より随分と丁寧だったので、
孫福氏が取り計らってくれたのだろう。
昼頃に帰り西瓜を出されたので食べる。
八羽という老人が来て話し込む。
夕方より酒宴。夜は土産を買いに町に出た。
※馬を奉納したら馬はどうするのでしょう?
現在なら車1台を奉納するようなもので、
丁寧にされるのは当然のですが、
伊勢神宮レベルの献物としては普通?
安政3年7月5日。
⑧二見浦に向けて出立。
途中、妻が初めてだという朝熊山に登る。
頂上に虚空蔵菩薩があり万金丹を買う。
元の道を下りて内宮茶屋で弁当を食べた。
孫福氏の用意してくれた酒肴付の弁当。
孫福氏は案内も一人付けてくれた。
午後4時頃に中井屋孫兵衛の宿に着く。
夕立から風雨雷鳴となり、
明日は日の出が拝めないだろうと、
宿の者が話していた。
※万金丹(萬金丹)は伊勢伝統の常備薬。
今も変わらず売っている漢方薬です。
7月1日から5日の行程。
安政3年7月6日。
夜明けに二見浦に出てみたが風雨。
日の出どころか小屋が一件見えるだけ。
晴天なら富士山も見えるらしいが、
今朝は見えず残念。午後、孫福家に帰る。
また八羽老人が来て話が弾んだ。
孫福氏も八羽氏もウニの塩辛が好物なので、
来年必ず贈ると約束した。
※二見浦の有名な夫婦岩があります。
せっかく夫婦で訪れたのに雨でした。
ウニは確かに下関の名物ですが、
伊勢でもウニは獲れるでしょうに・・・。
安政3年7月7日。
京都へ送る荷物の準備をしていると、
八羽老人に頼んでいた短冊や色紙を貰う。
お礼をしたかったが何もないので、
煙草1玉と小さな朱硯をあげた。
孫福氏の夫人にも迷惑かけたので、
肴代100疋を出すと丁寧な挨拶を受けて、
妻が白地の襟と縞糸一包料を頂いた。
安政3年7月8日。
①孫福家を出立。
孫福家下男が宮川まで荷物を持ってくれた。
②明星で斎の宮の古跡に参拝。
2里進んで③松坂の入口の天満宮に参る。
天満宮には本居宣長の顕彰碑があった。
本居宣長の著書を買おうと思ったがなく、
碑銘の拓本を買おうと思ったが意外と高い。
値切ってみたが負けないのでやめた。
近くに宣長の墓があるので行ってみたが、
どこにあるのかわからなかった。
八羽老人によると現在の本居家は、
養子を紀州から貰っており、
学問をしない茶人でつまらぬ人物だという。
その本居家を訊ね、短冊を所望するが、
今日は留守だからお断りという。
鈴の屋の鈴を拝見したいと言ったが、
それも留守だからできないとの事で残念。
④六軒の江戸屋に宿泊。
※高名な本居家も幕末には残念な状態。
天満宮は松坂神社の事か?
宣長の墓は樹敬寺にあります。
安政3年7月9日。
早朝出立。霧が濃い。
雲津で活きのよいボラを見たので、
早速せごししして一献。
そこから⑤津の町に入る。町はずれで昼食。
三重県津市 津宿跡①
200文の駕籠に乗って1里進み⑥窪田、
三重県津市 窪田宿跡
100文の馬に乗り1里半進み、
⑦椋本に到着。
三重県津市 椋本宿跡
ヱビス屋五郎八の宿に泊まる。
※肴に一献に目が無い白石。
同行する奥さんも呆れてるでしょう。
駕籠と馬では駕籠の方が高いんですね。
金額なども記載されているのが、
白石日記の面白いところです。
7月8日から9日の行程。
つづく。
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