今更ながら涙袖帖②

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(4)万永元年11月25日(江戸より)
みなみなさまおん障りなふおん事なされ候半と
そんし参らせ候さては先師おん書物着物等
利助見出し候杉蔵かへり候節さしおくり可被下候
蒲團は當分かり申候彌二郎便にまいり候
袷壹枚早速垢衣にきかへ申候
杉蔵紋付壹枚もち参候よしに御座候
今年はひぜん一つも出来申候御あんもし可被下候
殿誰様へもよろしくおんつたへ可被下候かしこ
  十一月廿五日
                玄瑞
お文との
訳:皆様にお変わり無く過ごされている事と、
推測致します。さて先師のお書物や着物など、
利助が発見したので杉蔵が帰る際に持たせます。
布団は当分の間借りました。
彌二郎が持ってきた袷は、

早速垢衣から着替えています。
杉蔵に紋付を1枚持たせています。
今年は皮膚病のひとつもできてませんので、
ご安心下さい。
皆様へも宜しくお伝え下さい。
  11月25日
                  玄瑞
お文どのへ

※義兄松陰の遺品の書物や着物を、
 利助(伊藤博文)が見つけ、
 杉蔵(入江九一)に持って帰らせるとの事。
 伝馬町から貰い受けたとも思えませんので、
 江戸藩邸にあったものでしょうね。
 久坂が皮膚病だったと読む人もいますが、
 「皮膚病さえ出来ないくらい元気ですよ!」
 という意味でしょう。

(5)文久元年2月26日(江戸より)
初はるに相成候へとも寒さつよく御座候處
杉みなみなさま其外御親類にもおんかはり無之
おんくらしなされ候よし何よりめでたく
そんし参らせ候別紙は水戸御隠居さま御存生の
折の御まり歌にてさつま屋敷にて
うつしかへり申候みなさまへおん見せ可被下候
中井生雲へもたよりあらはおんうつし
おんおくりなさるべく候かしこ
  二月廿六日
                玄瑞
お婦美との
訳:初春となりましたがまだ寒さは強い折。
杉家の皆様やご親戚にもお変わり無く、
お暮しになっているとの事でなによりです。
同封の別紙は水戸のご隠居様が、
御生存中に作られた手毬歌という事で、
薩摩屋敷で写してきたものですので、
皆々様へ見せて下さい。
中井や生雲へも便りすることがあれば、
写して送って下さい。
  2月26日
                  玄瑞

お婦美どのへ
※個人意見ですがここまで読んでいて、
 はじめて愛情があるように感じた手紙です。
 用事やお礼ではなく手毬歌を送ったのみ。
 宛名を「婦美」と洒落ていますので、
 距離はかなり縮まっていると思われます。
 また薩摩藩邸に出入りしている様子も、
 推測できます。

(6)文久2年4月3日(兵庫?より)
いよいよ御無事とそんし参らせ候我等も障りなふ暮候
まま御あんもし可被下候金の事先日より梅兄へ
御めんどう申上おそれ入候へども是もいたし方無之事
と存じ参らせ候金位にて上様の名折と武士の面目を
けがし候様に相成候てはあいすまず人にすくひを
頼まれては人も助けずてはならぬやしなはずては
すまぬ事もあり候ゆへ金も人並よりは澤山に入申候
これは兄様へもよろしくおんことはりなさるへく候
さて薩州の日下部の妻子にはかんしんの事ども有之
杉蔵もそんし居申候此内小野寺十内より妻方へ送られし
涙襟集を杉蔵の気付にて日下部へおくり申候其内にも
和歌などこれありいと悲しき事どもなり士の婦人は
はやり歌などうたふは甚見苦敷事にてひまもあれは
少々和歌はよみ度事にて候ずいぶん気晴にもなる
ものとそんし参らせ候杉おかかさま姉様なとへ
よろしくおんつたへ可被下候かしこ
  四月三日
                玄瑞
お文とのへ
保福寺へはおいおいおんまいりとそんし参らせ候
訳:いよいよ御無事と存じ上げます。
我等も障りなく暮らしておりますので、
ご安心下さい。
金の事、先日より梅兄へご面倒申し上げ、
恐れ入ってますがこれも仕方ないのです。
金の事で上様の名折れと武士の面目を、

汚すわけにはいかず、
人に救いを求められてこれを助けずでは、

どうしてもすまぬこともあり、
金も人並みよりは沢山必要なのです。
兄様へうまく言っておいて下さい。
さて薩州の日下部の妻子には

とても感心させられました。
これは杉蔵も存じておりますが、
小野寺十内より妻方へ送られた涙襟集を、
杉蔵の気付で日下部に送ったようです。
この中には和歌等もあり悲しさが溢れます。
武士の婦人が流行歌を歌うのは見苦しいので、
暇があるなら和歌を詠んでははどうでしょう。
ずいぶん気晴らしにもなると思います。
杉のお義母様、姉様等へ宜しくお伝え下さい。
  4月3日
                  玄瑞
お文どのへ
保福寺へは度々参っている事と思っています。

※う~ん。お金を借りたお礼は良いとして、
 これは仕方ない事なんだといい訳。
 そのくせ他人の妻を褒めて注文を付ける。
 文がこれを読んでどう思ったか不明ですが、
 普通はブチ切れてしまいます。
 注文は愛情の裏返しなんですけどね。
 小野寺十内赤穂浪士のひとり。

つづく。
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