伊庭八郎の征西日記⑪

つづき。
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5月15日。
晴れ。御供一条につき皆々が来る。
京都でのお手当が支給された。
下帯を買い、1朱払って少々お釣り。
泰次に道中手当料として3分渡す。
これは父上が喜兵衛に託けたもの。
明日、御舟に乗り込む順番は筆頭順との事。
忠内氏の組は木戸氏、吉亀氏、吉六氏、
村上氏、久永氏、飲海氏、浅井氏の7名。
教授方戸田氏、柏木氏、右両氏、
鏔三郎殿が同道して、
父上方を訪問。戸田氏方にも行った。
父上の所では松田氏と面会し、
父上に2両ほど頂戴し、
別で先日上様のお供をしたご褒美として、
100疋拝領と、
旅の井御扶持金として3両2朱と、
80文を拝領する。
夕方に料理を少々買い、
木戸氏宅で御馳走した。
※沢山のお手当が頂けたようです。

5月16日。
雨。上様の駕籠は5ッ半時に出発し、
京橋口から乗船。
父上ら奥詰御一統がお供したが、
雨で難儀であった。
安治川から御船は天保山へ入ったが、
風雨強くおまけに空腹。
天保山に上って昼飯を食べ、
再び海岸に出た。
軍艦を拝見したが、すぐに出帆となり、
13艘の軍艦は濃煙を噴き上げ、
江戸を目指して出帆した。
我らは安治川を歩いて新町
心斎橋を通り夕刻に帰宅。七ッ時頃だった。
※将軍徳川家茂は軍艦翔鶴丸で江戸へ帰還。
 警護の筈が風雨と空腹だからって上陸??

5月17日。
晴れ。
午前中は宿に居たが、昼後に近鐘氏と共に、
市中を見物して夕刻に帰宅。
今日、講武所方50人に、
明日の早朝に黒龍丸で4組から7人で順に、
江戸へ帰還せよと仰せがあった。
忠内氏の組は自分と三郎までのところ、
忠内氏と一緒に帰りたいので、
小林氏、松尾氏に譲った。
賄いより鯛2枚と酒が出る。
※護衛する将軍が帰ったんですから、
 伊庭らも帰還するのが当然。
 伊庭は帰りたくないのか、

 順番を同僚に譲っています。

5月18日。
晴れ。
槍剣方50人が黒龍丸にて江戸に帰る。
三橋雙三殿が体調が優れず、
終日私宅で寝込む。
※いよいよ順次江戸への帰還が開始。

5月19日。
昨日出立した人の荷物が、
早朝に東海道経由で送られた。

5月20日。
晴れ。兒玉氏、青山氏、三枝氏、
近釜氏と共に住吉浦に行く。
この間に色々と見物。
堺でカレイ等の浜料理を食べる。
澤山見物は、久々に楽しめた。
※久々に楽しめたとのことですが、
 日記を読む限り、
 殆ど楽しんでいるように感じますが。

5月21日。
晴れ。近釜氏、青山氏、三枝兄弟
三郎と共に奈良見物。
玉造から奈良道、
暗がり峠大勢宝木追分を通り奈良へ。
その道は9里程。
南都へ八ッ半時頃に到着。
猿沢の池の辺りに迎判屋に泊まり、
案内を雇って春日大佛などの寺院を見物。
夕刻旅館に戻り、酒飯を取って寝た。
※帰りたくない連中・・。
 奈良まで行きますか?
 春日大佛とは東大寺の大仏の事ですね。

5月22日。
晴れ。早朝出立。案内を雇い西辺りを見物。
神功皇后陵やその他3~4ヶ所を参拝した。
この辺りは景色が良い。
吉野大峯金剛山千早峠が所々見える。
八ッ半時に大坂に帰宅。

5月23日。
晴れ。昼後から雨。終日宿に居た。
昨日の南都見物の費用を割り勘。
自分と三郎の分で1分150文。
先日の堺での割り勘は2朱。
喜兵衛への給金が1両。
泰次の道中入用として2両を与えた。
※旅行で疲れたのか終日在宅。
 暇なのでお金の計算でもするかって感じ?

5月24日
朝、風強く雨。終日宿に居た。
筒井氏に4両を用立てる。

5月25日。
雨。天ぷらを催す。天野氏、三枝氏が来る。
夕方、近釜氏、三鎌氏の宿に行き、
酒を馳走になり、山本庄一郎も来た。

5月26日。
晴れ。早朝妙法寺へ参拝し、大松を見る。
実に広大な境内。
朝涼や 人より先へ 渡りふね 
忠助が今日より来る。
其むかし 都のあとや せミしぐれ
五ッ半時頃、近釜氏、三鎌氏、青繁氏、
私の4人にて、
真田山より初めて御城の外回りを見る。
天満橋を渡り天神へ参拝。
堂嶋へ行って米市場を見る。
この辺りは12月頃が、
とても賑やかになるらしい。
しるこ屋に入ってしるこを食べ、
八ッ時前に帰宅。
夕刻、三雙の病気の件で、
松田四郎左衛門を訪ねて、
医者の手配をして日没時に帰宅。
※俳句ですか?珍しい。
 2首も詠んでいますね。
 三橋雙三はまだ体調が優れないようです。

 結構ほったらかしでしたねぇ。

5月27日。
晴れ。医師の件で松田氏より使いが来る。
昼後、天豊氏、筒井氏、近釜氏と共に、
釣りに行く。
難波新地にて寿司を食べる。
高津へ行き夕方帰宅。
※三雙の為に医者を手配していますが、
 心配ではないのかは釣りに行っています。

5月28日。
上様が21日の午の刻に、
江戸城にお帰りとの事を飛脚が伝えに来た。

5月29日。
雨。昼後晴れた。
忠内氏他4~5人と共に高津へ行き、
揚弓を引き、
難波新地の兎角に行って酒を飲む。
七ッ時頃に帰宅。夜分近釜氏宅に行く。
※揚弓に酒・・遊びまくってますね。

5月30日。
雨、晴れ、また雨。終日宿に居た。
あひるを2羽買い、
天野氏と三駒氏とで食べた。
風が強く雨が強い。
※梅雨ですから雨ばかりですね。

つづく。

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