調べれば調べるほど面白い中山忠光。
失踪するわ、台場造りに参加するわ、
挙兵するわ、潜伏中抜け出すわ、
色々とやんちゃしまくっているわけですが、
死んでもなお化けて出ると、
やんちゃぶりを発揮しています。
中山忠光。
明治の終わり頃の事。
安岡に東権郎という正直な漁師がいました。
権郎がスズキを釣る為に、
綾羅木の黒岬鼻沖で漁をしていると、
いつの間にか貴公子のような、
立派な若武者が舟に乗っており、
小六連(六連島の隣りの馬島)まで、
連れて行ってくれと言いました。
権郎はこれを承諾して島まで送ります。
若武者は待っててくれと言い残し、
一人で歩いて島の奥に向かいますが、
間もなくして戻ってきました。
「すまぬがいっしょに行ってくれ」
と彼が言うので一緒について行くと、
一軒の小屋に着きます。
彼は戸口に貼ってあるお札を剥いでくれと、
権郎に頼んだので権郎がそれを剥がずと、
先に帰って待っていてくれと言いました。
権郎は舟に戻りしばらく待っていると、
血のしたたる生首を提げて戻って来たので、
びっくりしてどうしたのかと聞くと、
「私はこやつに殺された中山忠光である。
いま仇を討ってきたのだ」と彼は答え、
舟をもどしてくれ言うので、
恐る恐る黒岬鼻の岸まで戻しました。
「お礼をしたいので望みのものを申せ」
と彼が言うので権郎は、
「漁師なのでスズキが沢山釣れれば幸せ」
と言うと彼は海が黒ずんだところを指さし、
「あそこで釣るとよい」と告げ、
生首をさげて松林の中へ消えて行きます。
その教えられた場所は、
平常は全く釣れぬ場所であったが、
釣り糸を垂らすと入れ食い状態となり、
瞬く間に舟はスズキで一杯になりました。
権郎は喜んで帰りましたが、
家にたどり着くと疲れて眠ってしまいます。
次の日、目を覚ました権郎は、
家族に昨日の自分の様子を尋ねました。
すると女房は、
「昼日から釣りもせんで、
綾羅木と小六連を往復しとった。
浜で皆がお前さんの行動を不審に思い、
見守っているうちに、
沢山のスズキを持って帰ってきた」
とのこと。
権郎は昨日の不思議な出来事を皆に話し、
沢山釣れたスズキを売って大金を手にいれ、
暮らしが良くなり幸せに暮らしましたとさ。
・・・と、
こういう話が地元で伝わっています。
幽霊になっても行動的な忠光君ですが、
血のしたたる生首を持ってくるのは、
なかなかスプラッターなお話です。
暗殺犯が小六連に潜伏していたようですが、
お札の貼っていたのはどういう事でしょう。
潜伏していた暗殺犯も、
幽霊の襲撃を予想していたのでしょうか?
何度か失敗しているのかもしれませんね。
■関連記事■
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幽霊に殺されたのは彼ともされています。
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